題名:箱庭の街V 登場隊員:ゾンド・ヒモト人風の男(NPC)(中央区ジンディッセ) ゾンド【入室】 (2008/05/10 (土) 22:35) ◆ ゾンド :(満月館、一の亭ホール。年代ものながらもよく手入れされ、丁寧に整備の行き届いたグランドピアノの陰に隠れるように、なにものかの塊はそこにあった。前回行われたオークションにて、部隊付文官の護衛役として同行した軍属の少年のようなものである。腰の前あたりで重ねられた二つの血色の悪い手には、新品そのものの光沢を手前の古びた楽器へ誇示するかのように輝かせる、金属製の大きなケースを提げている。) 2008/05/10 (土) 22:35 ◆ ゾンド :(その中身はほんの数時間前に出来上がったもので、この夏の丘の中でも名の知られた、有数の仕立て屋の手による作品である。至極当然の事ながらその対価は正に天文学的な数値が弾き出されており、一介の下級軍属としてならばその現象はただの茶飲み話の種になる程度の存在であっただろう。そして、歴史と風格ある店の中では酷く場違いな佇まいをした少年に、その時になっても会計担当の番頭は訝しげな視線を隠そうともしなかった。彼は契約の段階でも口にしており、今回でも念を押すように現金での支払いを求めたが、作品を受け取りに来た少年は提示された契約書を一顧だにすることもなく、番頭へ淡々とAM金貨を譲渡する。重量を計り終えた番頭は、一切迷いの無い仕事人の表情で少年を送りだしていた。) 2008/05/10 (土) 22:35 ◆ ゾンド :(夜であろうともその白亜の城への道は迷うはずもなく、館に入って最寄りの警備兵に事情を説明すると、一も二もなく証拠の提示を求められたので、持ち帰っていた貸し出し品の仮面を手渡したた。彼は射抜くような瞳で仮面を眺めつつ、焦る事もなく静かに館の奥へと消える。そうして、一般の観光者の邪魔にならぬよう、ここに佇む。) 2008/05/10 (土) 22:35 ヒモト人風の男【入室】 (2008/05/10 (土) 22:37) ◇ ヒモト人風の男 :(平時は部外者の通行が許可されていない一の亭から屋敷へと通じる大扉。その横に警備兵の詰め所があり、使用人たちはそこを出入りしている。その小さな扉のところから、やや焦ったような兵の声が聞こえてくるだろうか。「このような所を通られなくとも、いま扉を開けますので…!」 その声を遮るように、小さな扉が音を立てて開いた。先に顔を見せたのは、小柄な男だ。肌は黄色、髪は僅かに赤みが買った黒、起伏のなだらかな顔のつくりに、黒い光彩をした細い目。ある程度の知識を有するものであれば、男がヒモト人とよく似た特徴をしているのがわかるだろう。)たかが人ひとり通るのにわざわざ大扉を開くのか。馬鹿馬鹿しい。無駄な労力だ。しかも、こんな重いものを持っている俺に待てというのか。…第一に貴様らの主人も、この扉を使うだろうが。(冷笑をもって兵の意見を切り捨て、歩き出そうとして、そこでびたりと足を止めた。そのまま進んでいれば調度2歩目の位置に、薄暗い色の少年がいたからだ。袋状に結んで手に提げていた布の包みが重たげに揺れ、壁に当たって鈍い音を放つ)…なんだ?貴様、あのバカの新しい拾い物か?(細い目をさらに細め、少年の頭上から声をかけた。) 2008/05/10 (土) 22:57 ◆ ゾンド :(そういう事には慣れているとはいえ、決してその内面にわだかまりが浮かばない訳ではないけれど、それを外界に決して悟らせない点は、この生き物の殆ど唯一と言っていい長所だった。)旦那様、どうかお気になさらず。所用にてこちらに伺いました。今は、係の方を待っている所です。(丁寧に頭を下げて、こちらからは目を合わせないように、自分の足元を見るように俯いた。) 2008/05/10 (土) 23:07 ◇ ヒモト人風の男 :(頭を下げた少年の後頭部を眺めて、首を傾げる。どこかで見たような気がするのだが、思い出せなかった。この屋敷の主であり、建前としては自分の友人ということになっているファルゼンならば、すぐに言い当てられるのだろうが、幸いな事に彼のような記憶力は持ち合わせていなかった。ふん、と気の無い相槌を返して顔を上げると、視界に目当てのものが飛び込んでくる。伝達精霊の淡い光だった。)そうか。ならば、立つついでにちょっと持っていろ。(まるで自分が少年の主人であるかのように、自然な仕草で、手に提げていた布の包みを相手へと突き出した。包みは正方形の大きな布の角を対角線で結んで袋にしてあり、結び目部分から手を離せば、中に一つ入った荷物が隙間から姿を覗かせるだろう。それは、ただの金属塊だ。正確な立方体である事以外、なんの特徴も無い。少年へ荷物を任せると、男のほうは精霊を捕まえて耳を傾け、盛大に舌打ちしていた。)拾った、だと!? それでは何も解らんだろうが! 2008/05/10 (土) 23:22 ◆ ゾンド :(どこまでも高圧的な男を無言で拝したまま、手持ちの私物を自分の右側に置き、細心の注意を払って包みを受け取った。重心が移動した時に前へつんのめりそうになるが、どうにか耐える。それは恐らく金属であろうか、サイズの割には結構な重量がある。包装されていた布は目の前で一部だけがめくれ、鈍く光沢を放つ金属プレート上に印刷された文字列が露わになった。それは非常に奇怪な記号の羅列であって、同じ長さではあるが幅の違う黒い棒が不規則な間隔を取り、表面の一箇所に記されている。)…8.653876…。(この少年はその図形の意味するところを正確に、本当に何気ない無意識のまま、微かな声量ではあったが、うかつにも発音してしまった。) 2008/05/10 (土) 23:40 ◇ ヒモト人風の男 :(続いて3匹、また男のもとへと飛んでくる精霊たちだったが、どの情報も外れだった。そのうち2匹へなにごとか吹き込んで外へ放り、あと2匹は放っておく。精霊の淡い光が、壁にかけられた巨大な絵に入っていくのを目で追っていて)…………何だって?(横から聞こえた声に、片方の眉尻を跳ね上げる。佇む少年を見、彼が見ている金属を見、そこに記された何かの模様に焦点を合わせた。僅かな沈黙の後、少年の顔へ視線を戻し。)……どういうことだ。それが読めるのか?どこの者だ、貴様。(そう、矢継ぎ早に質問を浴びせる。その剣呑な雰囲気を察したのか、散歩に来ていたらしい市民がひとり、また1人と帰路について、ホールの中は段々と静けさを増していた) 2008/05/10 (土) 23:51 ◆ ゾンド :………………。(その少年は押し黙ってしまった。決して男の顔を見ようとしない。)……申し訳ありません。こちららにも、満月館から借り受けた衣装の返却という、欠かせない用事があります。詳細については、旦那様御自身の分析にこそ、価値があると思われます。どうか、我々については、ご容赦を。(遠のく客達と、いきりたつばかりの男の様子に憔悴してばかりの最寄りの警邏の兵に向けて、その重い包みを差し出した。)…お返しします。 2008/05/11 (日) 00:05 ◇ ヒモト人風の男 :ファルゼンへの用ならば俺が取り次ぐ。何なら、直接引き合わせても良いが。(言いながら、この少年はどこぞの貴族らの使いというわけではないようだと、ようやく気がついた。使用人なら、衣装を借りに来たりはしない。短く息を吸い、ややゆっくりとした言葉を吐き出す。)…情報が無くて困っている。見ての通り、それ自体にそれほどの価値は無い。ただ、カタナと――解るか?ヒモトの剣だ。それと、この金属は同じ技術をして作られたように思う。その技術に、知識に価値がある。作られた場所、原料、工程…――何でも構わん、知っている事があれば、聞かせて欲しい。報酬が必要なら用意するが。(少年の手から兵の手へ、金属塊が渡っていく。困惑げな兵にそこに立っていろと一瞥をくれ、少年へと視線を戻した) 2008/05/11 (日) 00:23 ◆ ゾンド :報酬などというものは、必要ありません。お困りであれば、我々の有する知識の範囲内でなら。……「カタナ」というものについては分らないけれど…。その金属の本質は、極めて強靭な合金の一種。恐らく高重力大気圏下で精練でき、鉄をメインマテリアルとする鋼鉄としてなら、理論上では最強の耐久力を持つ。含まれる合材は、ニッケル17.5%、コバルト12.5%、モリブデン3.75%、チタン1.8%、アルミニウム0.15%。強度はチタン合金の約1.9倍、超々ジュラルミンの3.2倍。重量は10立方cm当たり、8.653876kg。どのような低温であろうとその強度は揺るがず、加熱してすら殆ど膨張をしない。…概論としてはこのような金属。他に、踏み入った質問は? 2008/05/11 (日) 00:37 ◇ ヒモト人風の男 :…カタナなら、まあ、これは正しくはそうではないが、同じ手法で打たれたものだ。(そう、ベルトに下げた細長い筒状の革の袋を開く。中にあったのは、鞘に納まったままのヒモトの短刀だ。それを少年へ差し出しながら、一言一句聞き漏らすまいと耳を傾けていた。尋ねられれば、冷笑ではなくやや人間味を帯びた苦笑が、その黄褐色の頬に浮かんで)……他に、か。他どころか、俺の知らん――恐らく、アルケミストも知らない物質の名がいくつも出たのだがな。お前は、それらを全て把握しているのか? 2008/05/11 (日) 00:50 ◆ ゾンド :それは、本物の「カタナ」ではないのですか…。それが正しくないのであれば、「カタナ」と、この金属は全く違うものであってもおかしくはないように思えます。残念ですが、…アルケミストの教育課程については無知です。…今述べた前者の五つの言葉は、その金属に含まれる元素の仮称です。しかし、それらの元素を安定供給するには、それこそ特殊な地質条件に加え、天文学的な資本が必要となり、その中には、単体では人体に著しい悪影響を及ぼすものもあります。それを資材として大量運用するのは、事実上不可能に思えます。 2008/05/11 (日) 01:04 ◇ ヒモト人風の男 :ふむ、そうか。しかし、ではどうやってヒモト人はカタナを…………お前はその知識を、どこで――ああ、いや、これは都合が悪い質問だったか。取り消す。(言いながらも思考の半分は既に本業のほうへと飛んでいて、視線が斜め下方を彷徨う。暫くそうしていたが、ふと顔を上げて、真っ直ぐに少年を見、)…お前、俺のもとで働く気はないか。仕事を持っているのかは知らんが、給金があれば今の倍以上は約束する。必要なら、女だろうと酒だろうと用意するが、どうだ。 2008/05/11 (日) 01:16 ◆ ゾンド :「カタナ」については、伝聞からの推測という不正確さながら、幾つかの仮説を提示できます。「折れず、曲がらない。」この性質は、金属の持つ「粘性」と「靭性」という相反する要素に一つの解答があるように思えます。単体の鉄をそのまま加工するのではなく…性質の違う鉄を二つ、具体的には結晶構造や炭素含有率の異なる鉄を二つ以上、組み合わせて加工すれば、両者を相互補填できるのではないでしょうか。…我々は何も求めません。もし与えられたとしても、それが義務や強制でなければ、生活できる最低限の物以外、何も受け取りません。変わって、旦那様が何か我々に求めるものがあれば、それが我々が与えることができるものであるのなら、我々はそれを与える事を躊躇しません。…所属について、我々はもう、かの命令を違える事は不可能です。お力になれず、すみません。 2008/05/11 (日) 01:29 ◇ ヒモト人風の男 :――…素晴らしい。そこまでの知識を持っていて、何故それを使おうとしない。(拍手でもしそうな勢いで両手を広げ、そうして、素朴な疑問を口にした。まったく会話についていけないらしい兵士を横目で見やり、小さく唸って)求めぬというなら、命令に従う必要など無かろうに。可能ならば、今すぐお前を拉致してうちの炉に連れて行きたいのだがな。残念なことに、腕力のある部下を今日は連れていない。まあ、気が変わったら、俺は暫くこの街にいるから、いつでも尋ねて来るといい。歓迎する。…ああ、俺は、セサロ・ミリアルドだ。お前は? 2008/05/11 (日) 01:42 ◆ ゾンド :………………。(名を求められた少年はゆるゆると首を振ると、呆然と立ったまま男の横に控えている金属を抱えた兵士へ向き直り、会釈をした。足元から取り上げた金属のケースを兵士へそのまま差し出す。)オークションの、衣装係の方へ渡して下さい。…セサロ様、御忙しい中に引きとめてしまいました。無礼をお許し下さい。(一団に背を向けて、少年がグランドピアノの裏手へ回る。そうしてセサロの視界から消えた瞬間に、もう小柄な背は消え去っていた。もし足元を見た者がそこに居れば、床のタイルの隙間に黒い染みが微かに流れている様子が見えるだろう。それもきっと、ほんの数秒で視認できなくなってしまう。) 2008/05/11 (日) 01:54 ゾンド【退室】 (2008/05/11 (日) 01:54) ◇ ヒモト人風の男 :待て!(少年を追って踏み出し、影も形も無くなったのに細い目を見開いて、次に残念そうな顔をした。)……身元を辿らせないつもりか。これでは尾行すら出来ん…参ったな。おい、貴様、あれに服を貸し出したのは誰だ。あと、似顔絵を描けるのを――ああ、何故こういう時に限ってファルゼンがいない!(そうして、まだ絵の中で遊んでいた伝達精霊を呼びつけ、次々に命じて放すと踵を返した。兵士を押しのけ、その手から金属を引っつかむと、屋敷の中へ戻っていく。衣服ケースを手に呆然としている兵士が自分のすべきことを思い出すのは、もう少し先になるだろう) 2008/05/11 (日) 02:08 ヒモト人風の男【退室】 (2008/05/11 (日) 02:08) HIGHLAND FORTRESS 峠の要塞(閉鎖しました) http://h-f.sakura.ne.jp/kariken/index.html BACTERISM MATRIX http://bacterism.matrix.jp/ PCキャラページ http://tryx-quad.sakura.ne.jp/zond.html