題名:箱庭の街Y 登場隊員:屋敷の主(NPC)・給仕(中央区ジンディッセ) 屋敷の主【入室】 (2008/05/20 (火) 22:00) ◇ 屋敷の主 :(舞踏会の最も華やかな場所である、庭の音楽と踊りの輪から少し離れた所。軽食が並ぶテーブルよりもさらに外側のベンチに、二人の男が腰を下ろしていた。オリーブ色の髪に片目を覆う仮面のほうは、満月に合わせたのか、光沢のある濃紺に豪奢な銀刺繍の衣装。もうひとりは、切れ長の黒い目を片方のぞかせ、もう半分には頭から薄い紗を被っていた。仮面舞踏会だというのに、どうも顔を隠す気がないらしい。まあ、二人つるんでいれば、大体の常連客はそれだけで正体を見抜いてしまうだろう。お互い穏やかな表情を浮かべながらなにやら会話し、時折立ち上がっては知己のものと挨拶を交わしている。そうして一通り人の波が去れば)……しかし、今日は色々凄かったね。久々に緊張した。 「全くだ。とんだとばっちりだぞ。あんなもの…かの人には暫く目をつけられるだろうな。来月までいるつもりだったが、近いうちに発つ」  うん、それがいいだろうね。途中までうちの誰かを行かせるよ。(声を潜めた言葉は、しかし、二人ともまったく変わらぬ商人の笑顔を浮かべたままで交わされていた。はたから見れば、踊りの輪を見物して微笑んでいるようにしか見えない。) 2008/05/20 (火) 22:17 ◇ 屋敷の主 :ああ、でも、彼。あの男の子はどうする?人相書きは見たけど、どうもぴんと来ないっていうかさ。でも何処かで見た様な見てないような…  「しっかりしろ、貴様は人の顔を忘れないことしか能力がないというのに」  だってあの絵下手じゃないか…  「まあ確かに似ていないな。」  (男たちがそこでふと言葉を切り、艶っぽい目でこちらを見ている淑女たちへ注意を移した。とくに屋敷の主である中年のほうが、熱心に手を振り返している。) 「で、どこの誰だ?解るんだろう?」  教えない。何の為の仮面舞踏会なんだよ。ああ、やっぱり若いってそれだけで素晴らしいよねぇ!  「素晴らしき馬鹿だな。」 2008/05/20 (火) 22:31 ◇ 屋敷の主 :(屋敷の主の必死のアピールも空しく、仮面の娘たちは別な若い男性に話しかけられ、そちらに夢中になる。がっくりと項垂れるひとへ、隣の男から慰めの言葉があるはずもなかった)「とにかく、あの子供の捜索は続けてくれ。費用は日単位で払う。もう1人、用があるのが居るんだがな。ヴォルセットに人を出そうとしたら、運悪く主が戻ってきた」  ああ、彼か。……10年と、ちょっと前だっけ?そうか、そんなに経つんだねえ。(そう、中年は遠い目をする。溜息と共に膝の上に頬杖をついて、暫く黙った。そのあと、ちらりと悪戯っぽい笑みが口の端に上る) でも、ヴォルセットのお屋敷なら、君が直接出向けば良いじゃないか。きっと快く迎え入れてくれるよ。  「俺はあの男が苦手だ。」  ははは、うん。知ってるから言った。 2008/05/20 (火) 22:46 給仕【入室】 (2008/05/20 (火) 22:51) ◆ 給仕 :(その服装だけは殆どごく一般的な、家事使用人用のお仕着せであった。黒のワンピースの上にフリル付きの純白のエプロンドレスを着ている。頭にも同じく、フリルの付いた白いカチューシャをホワイトブリムとして乗せていた。細い首には白のフリルが上下に添えられた、黒のチョーカーを巻いている。舞踏会参加者の証を為す仮面も量産品であって、形だけが申し訳程度に誂えられた満月館の備品を借りたものだ。上から下まで廉価品に統一された、この屋敷の使用人ではない何者かが銀色の盆を携え、二人のちぐはぐな男達の傍へゆっくりと控えた。飾り気のない小皿の上には二切れのサンドイッチを乗せ、それと同数のグラスも伏せてある。瓶は会場内からそれとなく拝借したもので、赤い液体という情報以外は、少年にはまるで難解なものだった。)……セサロ様で、あらせられますでしょうか。(声は確かにそこから聞こえはするが、視線や顔どころか、肉体の一片すら動作させることはなかった。) 2008/05/20 (火) 22:51 ◇ 屋敷の主 :(嫌味と軽口の応酬はいつものことである。だらだらと続く会話にも飽き、さてどうしようかと沈黙が降りたところで、中年のほうが先に気付いた。)ああ、君………(久しぶり、と思わず言いかけたところで、口を閉ざす。となりの男の怪訝そうな視線を感じながら、全く知らないふうを装い、言葉を続けた)屋敷の者じゃないよね。うーん、給仕候補にしては若すぎるんじゃないかな。――ワインふたつ。言われる前に、杯に用意しておかないと。(そう主っぽいことを言って、続いてその給仕の口から――口が動いているように見えなかったが――出た名に、そのひとの方を見た。呼ばれたほうも、首を傾げている)「何者だ、無粋なやつだな。まあ、この馬鹿の酔狂に無理して付き合うことも無かろうが」  酔狂じゃないよ、仮面舞踏会は浪漫だよ!(中年の主張は、闇色の男に倣って無視していいだろう。) 2008/05/20 (火) 23:02 ◆ 給仕 :あまりに多くの事について、申し訳なく感じています。…経験に寡く…お口に合われるかどうか、確証が持てなかったもので。その他についても、ファルゼン様のお心遣い、痛み入ります。(抑揚の無い声でファルゼンに謝辞を述べると、機械的にワインを注いだ。二杯ともに寸分狂わない均等な水量である。)……セサロ様へ、こちらの一方的な用件として、参じました。…畏れながら、申し上げます。……かの金属について、何か判明した事は、有りますでしょうか。 2008/05/20 (火) 23:14 ◇ 屋敷の主 :はは、誰も初めはそうさ。少しずつ、学んでいけばいい。あと、出来れば笑顔もね。(中年のほうは、へらへらと笑いながら注がれたワインを受け取る。そのあとに、二人の顔に一瞬の緊張が走った。闇色の男が、給仕の顔へ手を伸ばす。仮面に触れかけた指先は、しかし、後方からの中年の鉄槌によって動きを止めた。舌打ちのあと、切れ長の目を更に細くして、給仕を見据え)「…この前は振られたが、気が変わったのならば有難いな。……情けない事に、何も、だ。工房へ回したが、返ってくるのは今までと変わらない。形だけが手に入っても、歯痒いだけだな。」(どちらの男も本当の馬鹿ではない。顔を確認するまでも無く、かの手配書の彼だというのに気付き、そのまま話を続けた。ただ中年の方は、少年であるはずの彼の給仕服がなぜスカートなのか首を傾げたが、どうも大事な話らしいので、黙っておく) 2008/05/20 (火) 23:26 ◆ 給仕 :技術的に困難な点が極めて多い項目です。一つの目標として把握していますが、現段階では、とても。(グラスの分だけ軽量化され、バランスの偏ったた盆は、軽食の盛られた皿を器用に滑らせることで重心を安定させた。)こちらも、「カタナ」についてはほぼ未解明のままです。よって、アプローチを婉曲させました。汎用的に流通する多くの金属武器には見られず、なおかつ、例の金属のみが有する特徴が幾つかありました。セサロ様の指す「カタナ」が特殊な武器であるなら、そこから手掛りが見つかる可能性も。ただし、断言はできかねます。…余談ですが。この外装については、配置された手配の人間に対してのカムフラージュです。自信は皆無でしたが、結果としてはこうして穏便に接触できました。彼らの対処については、お任せします。 2008/05/20 (火) 23:44 ◇ 屋敷の主 :そうかい。まあ、立ち話も何だし座りなよ。君を見上げてると首が疲れるし、給仕候補生じゃないなら客人だからね。それ、くれるかな。(何が起ころうと、中年は相変わらずである。手を伸ばして盆から皿を取り上げると自分の膝に乗せ、尻をずらして、長椅子の真ん中に空間を作った。三人とも肥満体ではないから、座るには十分だろう。逆端の男は夜会用の笑顔の仮面を脱ぎ捨て、武器のミリアルド家の、ひとりの職人の顔になっていた。)「ふむ、まあ、格好はなんでもいいがな。続けろ。」  …え、…いいのかな。そこ流していいとこなのかな。確かに似合ってるんだけどそれはそれで問題じゃないの?それにしたってチェックがザルだな。ちゃんとさせないと…………ん、あれ?少年、カタナなら、隊の…(そこでまた、中年は口を閉じる。黒い目の放つ鬱陶しそうな視線にぶんぶんと首を振って、喋る代わりに自らの口へサンドイッチを詰めた) 2008/05/20 (火) 23:57 ◆ 給仕 :……頚骨の疲労については、想定にありませんでした。ありがとうございます。御言葉に、甘えます。(二人の男に挟まれる場所へ、静々と着席した。背筋は伸ばして、両膝は合わせて、平手は太腿の上辺りに重ねている。背中がベンチの背もたれに触れるのを待って、音を囁かせた。)炭素を含んだ鋼が安定となる結晶構造は、高温状態と常温下では大きく異なります。通例、鋼鉄が武器として使用される環境は常温です。よって、金属の強度を必要条件に耐えうるものとする為には“常温環境下で安定となる結晶構造として仕上げる他無い”といった解答が、恐らく支配的であるように思われます。事実、我々が調査した金属武器は、対象が全て要塞の備品という限定がありましたが、それに違わぬものでした。そして、件の金属の決定的な相違点は、やはりその結晶の組織にありました。これは金属の材質に依存するものではなく、特殊な工程の産物に因るものだと、思われます。…セサロ様。カタナの製造にのみ特有の処理について何か、お心当たりは。 2008/05/21 (水) 00:12 ◇ 屋敷の主 :(少年の言葉に、屋敷の主が喉を詰まらせそうになった。が、やはり友人の冷たい一瞥を受けて沈黙を守る。椅子を軋ませて背もたれに上体を預けた職人は、すぐ前に広がる喧騒へと視線を投げた。)「特殊、な。難しい事を言う。刀を打つ工程か………鋼を熱し叩いて、伸ばし、やすりをかけて整形…ああ、そうだ、土取り――粘土と灰を刃に塗って、…いや、しかし、あれは波紋に関わると聞いている。…焼入れか…?打ちあがった鉄を火床である程度加熱して、水に入れる。温度管理はわからん。カンだそうだ。」(僅かな文献と、もう代替わりして故郷を知らぬヒモト人と。聞きえたのはそれらの断片的な工程だけで、あとは工房のアルケミストや職人の試行錯誤だった。黄褐色の肌をした横顔に、苦渋が滲む) 2008/05/21 (水) 00:35 ◆ 給仕 :前者の多くは、武器の製造過程として至極当然に普及しているものです。……セサロ様が最後に述べられた工程だけが、我々の仮説と一致しています。900℃から1400℃圏内での安定組織の片鱗を持ちながら、同時に、常温下での安定構造も兼ね備えています。これは自然界では到底起こり得ない現象です。勿論、強引な圧力のみでこの組織を作る事も可能ですが、それには精緻な計算と莫大な圧力が必要となり、尺計りや万力などの手工業道具では、まず不可能です。「ヒモト」国の技術については情報が乏しく、確定的とは言えませんが、現在の設備を用いてこの結晶構造を発起させるとするなら……セサロ様の仰る通り、高温の鋼を何らかの手法で“急冷”しなければなりません。それも複数回に渡って、根気よく。これを継続して行うことによって炭素の配置が歪み、通常ではありえない強度を持つ鋼となります。恐らくこの鋼は「カタナ」が標的に接触する箇所に集中して用いられていることでしょう。この仮定が正しくあるのならば…カタナを造る彼らは、人間の手と簡易なアイテムのみによって、恐るべき高度な成果をもたらしている。…果たしてこの技法が、ほんとうに人間のみによる発明であるかどうか、我々には疑念が払拭できません。この処理の把握と実践には何か、“魔法”に近似したバックボーンすら感じます。 2008/05/21 (水) 00:48 ◇ 屋敷の主 :………ヒモト人は魔法使いってことなのかな。君も外見ばっかりじゃなく、同じ力があればよかったのにねえ(全く話についていけないのだが、しかし沈黙が拷問である中年が、そう軽口を叩いた。その所為で思考を邪魔された職人は、人を冷凍できそうな視線を中年へと向ける)「馬鹿は黙っていろ。……すると、何だ。結局はその”勘”を会得せねばどうにもならん、ということか。……遠いな、先は。……では、あの金属は――…お前も見ただろう、あのブロックだ。あれは、どこで、どうやって作られた…?ヒモトから輸入されたと仮定しても、ああいったものをそれだけの労力をかけて作るメリットがひとつもないからこれは成り立たない。これは、お前に聞いてもいい所か?都合が悪いなら無視しろ。…それと、俺の部下になる件だ。その知識も、無駄のない受け答えも、理想にごく近い。それなりの金と地位はくれてやると言ったが、あとは何が問題だ?」(そう、男は眉間を指で揉みながら言う。椅子の逆側では、中年が驚いた顔をしていた。この傲慢で完全実力主義の冷血男が、そこまで言ったのを初めて目にしたからだ。)……く、口説いている……(その一言が、また零度の視線を招くわけだが、懲りないらしい) 2008/05/21 (水) 01:08 ◆ 給仕 :製造された地域は、間違いなく、ヴィンヴィリヤ大陸上に存在します。ただし、現在のその座標は、最早かつての機能を完全に失っています。もし万一発見でき、残骸に辿りつけたとしても、資料文献や施設は極めて特異な思想の基に構築されています。具体例を一つ挙げるなら、数式の計算に10進法以外の順列を用いています。配属の変更についてですが……我々への投資に、セサロ様に還元される物が何も存在しないが故にです。この躯体は、単体で統制可能な時間が非常に短く設計されています。あなたではないあなたがたの意思によるものです。可能性で言うなら、この二時間後に崩壊する確率も決して無視できるレベルにはない。セサロ様が提供してくれるという財産も地位も、滅びた後にどう有益な効力を発生させるか、それを我々に計り知る性能は持ち合わせてはいません。この答えでは、納得できかねるでしょうか。 2008/05/21 (水) 01:26 ◇ 屋敷の主 :(庭の人だかりで、異国情緒漂う音楽と奇妙な踊りが始まっていた。普通以上にかの国の知識を持つ、その国の民族の血を引いた男は、少年の答えも相まって眉間の皺を深くした。暫く沈黙し、友人が口を開く直前で遮るように声を発する)「…あのブロックに刻まれていた文様も、そのひとつ、か。その地域の名ぐらい、置いていってもよかろう。…還元されるものはある。知識だ。金よりも尊い、というだろう。それが金を生み出す基礎となるのだからな。…第一に、人は必ず死ぬ。俺だって、帰り道で刺されて死ぬ可能性はきっとお前より高い。それまでに何を成すか、ではないのか?………いや、お前は、何も求めないと言っていたな。…どうしても首を縦には振れぬと?」 2008/05/21 (水) 01:39 ◆ 給仕 :……でしたら、これを。(近場のテーブルに置かれた紙を手に取り、指先を滲ませて何かを書き込む。できあがったそれを軽く巻いて、まだ指紋の付いていないもう一つのワイングラスの中へ入れてセサロへ向かって差し出した。)この紙に書かれた数字は、ゆらぎたゆとう我々のようなものではない、かつて確固たる知識の泉であった骸の、埋葬地点です。(小さいながらも几帳面な数字がそこにはあった。緯度と経度がメートル単位で正確に記入されており、最下段には高度まで添えられていた。その海抜は、−7000m以上を意味している。)……それでは、我々はこれにて。セサロ様…また機会があれば、お会いしたく思います。(その物体は一方的に会話を切り上げて立ち上がり、二人の男の視界外へ。さきほどその場へ初めて現れた方向とは逆の、ベンチの裏奥へ歩むと、そこで唐突に消えてしまった。その芝生の中を蠢く黒い流動体は、闇夜の中へ。) 2008/05/21 (水) 01:57 給仕【退室】 (2008/05/21 (水) 01:57) ◇ 屋敷の主 :(黄褐色の手を伸ばして、グラスを受け取る。視線はぼんやりと前へ投げられていた。そうして、別れの言葉を告げる少年へ)「…そうか。では、それまで死ぬな。まだ聞きたい事は山ほどある」(中年の方は、友人と少年を交互に見たあと、立ち上がって、少年へ笑顔を向けた。)来てくれてありがとう。またいつでも遊びにおいで。(そうして、その小さな背が掻き消えるまで手を振って見送っていた。行儀悪く椅子の背もたれに尻を乗せ、少年の消えたほうを見たまま)……ふられたね。見事に。 「ああ、完膚なきまでにな」 君はちょっと、いやかなりへこんでいる。 「悔しいが反論が見つからない」(手のグラスに視線を落としたまま動かない友人を横目で見、珍しく歳相応の微笑を浮かべると、中年は伸びをして歩き出した。)彼は友人であり、可愛い教師だ。それなら、また会えるさ。…ちょっと飲み物でも持ってこようか。温かいのがいいね。(まだ終わらぬ宴の灯が、夜の空を照らしつづけている。ようやく最後の1人が帰る頃、朝日が顔を出し、その太陽が天頂へ届く時間になれば、町のあちこちに貼られた手配書が少しずつ消えていくことだろう。) 2008/05/21 (水) 02:14 屋敷の主【退室】 (2008/05/21 (水) 02:14) HIGHLAND FORTRESS 峠の要塞(閉鎖しました) http://h-f.sakura.ne.jp/kariken/index.html BACTERISM MATRIX http://bacterism.matrix.jp/ PCキャラページ http://tryx-quad.sakura.ne.jp/zond.html