題名:ガラスのシャワー 登場隊員:ビッツ・ゾンド(ケッペンバウム要塞) ビッツ【入室】 (2008/08/08 (金) 22:08) ◆ ビッツ :(驟雨である。晴天にわかに掻き曇り、降り注いできた雨滴に慌てて駆け出した人々の波が、その男の周囲だけ綺麗に割れていた。まるではるか昔の伝説に残る、海を割った賢者の話にも似た――それは見事な割れっぷりだった)――ついてないなァ、俺は。(降り注ぐ雨をまるで気付いてもいないかのように、人の波とは逆の方向へ闊歩するのは、褐色の巨躯であるが――ちょっと、異様と言ってもいい風体だった。硬革の鎧を身に付け、左腕に重々しい二重張りの鋼鉄製ガントレットを光らせ、右手には巨大な長柄の斧を携えている。兵士というよりも、もはや重戦車といったほうが似つかわしいような、およそ平和な街中には似合わない格好で、しかも腰から提げた剣は鬼火のような光を薄らぼんやりと放っているのだから……不審者よりもよほど不審な、そんな男だった) 2008/08/08 (金) 22:14 ◆ ビッツ :(昨日はかなりの大騒動になっていたらしい。待機の同僚からも怪我人が出たと聞くし、色々な意味で残念だった。だが、雨の中で眉根を顰めて首を振るのは、そのことばかりが問題ではなくて)……濡れる。(重装備であった。久方ぶりのフル装備であった。金属製のガントレットであった。二重張りの鉄板を張り重ねた、手入れがすこぶる面倒な一品であった。……運が悪い、としか言いようの無い、男であった)濡れちまったもんは、しょうがないンだけどなァ……せめてもうちょっとこう、手心というか……(ツキが無い。話題の怪生物とやらには是非とも刃を交えたいところなのに、やってきたのはあいにくの雨だった。気分的にはもはや、半ばヤケクソである) 2008/08/08 (金) 22:24 ◆ ビッツ :星回りが悪いって言うンかね……まったく、ひさびさに暴れられそうなのになあ(ボヤいていても始まらない。巨大な長柄斧を手持ち無沙汰にぶらぶらと揺らしながら周囲に視線を巡らせるが、いかんせん雨に遮られて探索もはかばかしくなく、気分はますます重くなった)警邏の仕事なんて、進んで引き受けるもんじゃないなァ。ロクなことにならん(軍人としてははなはだ問題な発言を飛ばしながら、軒先に積まれている木箱を軽く蹴り飛ばした。水に濡れたそれが景気の悪い音を立てたのを聞くと、ひとつ大きな溜め息を吐いてまた首を振る) 2008/08/08 (金) 22:44 ゾンド【入室】 (2008/08/08 (金) 23:06) ◆ ゾンド :(実に不愉快な気候の折に畳み掛けるように、我が者顔で人通りを裂き続ける障らぬ神の権化へ向けて、忌厭の感情ばかりをを過剰に含んだ視線が集中していた。時としてあからさまな舌打ちも確実にあっただろうが、足音や衣擦れ雨の着地を始めとした無数の雑音によって打ち消されている。迂闊な手出しを空気だけで圧殺している不逞そのもの輩の目前は、いつものようにその時もやはり割れたのだが。彼の立ち位置から屋店一つを過ぎる程の手前で、雨具の一切も装わない左手の欠けた濡れ鼠が、彼の正面に無言で直立している。) 2008/08/08 (金) 23:06 ◆ ビッツ :(思えば、最近は本当にまともな戦闘というものをしていない。最後に残った戦闘の記憶は、まがりなりにも同僚であった男とのものだから気分の悪さもひとしおと言ったところで、それを振り払いたいという気持ちも多分にあった。のだが)……ロクでもないな。(ぼやく声も雨に掻き消されて届かない。濡れきった髪の毛をぼりぼりと掻きながら、水溜りを踏んでぱしゃりと音を立てる)鐘が鳴らなきゃ帰るに帰れんし、まったく損な……うん?(目前に、人影。気付くのが遅れたのは雨のせいでもあろうし、男にしては不覚にも周囲に気を払うことを怠っていたせいもあろうが、その対象がまるで感情を灯さない置物のように感じられたからでもあるだろう。左手を無くしたモノクロの影に、寸時幽霊にでも出くわしたかのように眉を顰めて)……なんだ、お前…か。 2008/08/08 (金) 23:10 ◆ ゾンド :此方の名称を発声しなかった事については、大きく感謝をしたい。…今後の行動の理由は、聞かないで欲しい。(暗がりの中で俯いている顔の表面は、水分のせいで貼り付いた髪の毛のせいで、余計に判別を困難にしている。 二三度跳ね転げて横倒しになった木箱は、固定されていない蓋が下敷きになっていた。その内容物であろう薬品用の空の小瓶が乱雑に散らかっている。その中のガラスの破片を一つだけ、腰を屈めて右手で拾い上げ、アンダースローで放る。雑で緩い角度の放物線軌道を描いて、大男の頭上へ向かって行った。) 2008/08/08 (金) 23:21 ◆ ビッツ :うん?……何を、(しているのか、という発言は前もって言い置かれた相手の言葉によって遮られてしまっている。言葉は立ち消えになって、かわりに小さな吐息を漏らした男は、頭上を飛び越えていったガラス片を目線だけで見送って)…昨日は、えらい騒ぎだったらしいな。替わってやりたかったよ(相手の左手を苦笑い浮かべながら見遣り、そんな軽口を飛ばした。目前の相手はどうやら、腕一本の損失すら大した問題ではない体質であるらしいからこそ飛び出した軽口ではあるが) 2008/08/08 (金) 23:29 ◆ ゾンド :何も。(それは破片といえども、かつては瓶の下半分を象っていた部分のようだ。男の後背の空中、ちょうど大斧一本分の距離を保って、放り投げられた破片は不釣合いな音量の破砕音を立てて四散する。鋭利で細かな無数のガラス片は明かな指向性を備え、急襲した。)あなたを含めた各々の人間には、抗い難い無数の理由が、常に纏わり付いているように見える。 2008/08/08 (金) 23:40 ◆ ビッツ :(背後で音を立てて破裂四散したガラス瓶の残骸が、背中目掛けて急襲してくるのに対し、男の反応はほんの僅かだった。肩に担いだ長柄斧の刃を僅かにずらして後頭部を覆い隠すように持ち、無数の破片を遮る。斧の刃と鎧に阻まれて、鈴虫の鳴き声のような音を立ててガラスの刃は地に落ちた)……変わった隠し芸だな。(相手の意図が読めず、とりあえずそんな口を聞いてみせる。鎧に刺さったガラスの破片を鋼鉄に覆われた左手で軽く払いながら、続けられた言葉を聞いて)……喧嘩の種なら大歓迎なんだがな。こんな不運に纏わり付かれるのは、できれば御免こうむりたいところだよ。…何の話だ? 2008/08/08 (金) 23:49 ◆ ゾンド :直戴的に表現するなら、あなたは欲求不満であるようだ。これが喧嘩の種として、あなたは不服だろうか?責任の所在は、撹乱できると保証する。(泥に塗れた破片をまた一つ、鈍い四肢の動きで拾い上げた。斜向かいにある二つ屋の店の隙間には、それの本来の持ち主であろう中年の女が口を横一文字に結びつつ、通りがかる客未満の連中に手振りで何かを伝えながら、その光景を冷ややかに眺めている。破片を握る右腕には、見慣れた腕章は巻かれていない。) 2008/08/09 (土) 00:03 ◆ ビッツ :(相手の持って回った言葉を最後まで聞いて、毒気を抜かれたような表情になった。少しの間を置いて、呆れたような色を交えた奇妙な表情を浮かべた男は、しかしすぐにくつくつと押し殺した笑い声を立て始めて)お前なァ……いや、何だ。うん……お気遣い感謝するよ。なんだな、まったく……そんな気遣いされるとは思わなかった。(良いだけ笑って顔を上げると、先ほどまでの陰気な表情とは打って変わって楽しげな笑みを頬に浮かべていた。僅かに苦笑いが混じった笑みではあったが、そこに先ほどまでのかげりは見えなくて)いや、悪い悪い。そんな面倒はしなくてもいいよ、大丈夫だ。チト焼きが回ってたな、俺は。 2008/08/09 (土) 00:10 ◆ ゾンド :(感触や質感と表すしか適切に近い言葉の無いような、それの表面が硬直する。抱えた破片を手の上でぐるぐると持ち回して、手持ち無沙汰な心象を紛らわしているようだった。)…あなたに面倒は、掛からないのだけれど。…この推移がよく解らない。事後に互換させたい文書も用意はしたのに、無駄になってしまいかねない。…では、あなたはどうして、その装備を? 2008/08/09 (土) 00:23 ◆ ビッツ :いやなに、自分の人間の小ささにちょっと呆れてるだけだよ。そこまで用意周到に喧嘩の保険をかけるヤツも珍しいンじゃあないかね?(いつの間にかにわか雨は上がっていた。替わりに吹き始めた強い風が雲を吹き散らしてしまったのか、面を上げて空を見ればやや欠けた半月が煌々と照っていて、それを見てまた笑う。硬直した表情の相手に近づくと、頭に手を掛けて撫で回すようにくしゃりと掻き混ぜて)戦うためだよ。だが、俺の戦う相手はあくまでも「敵」だ。そんな風に俺の事を気遣ってくれる仲間を、こんな物騒なモンで殴り倒すわけにはいかんだろ?……いやなんだ、世話かけたな。ありがとう。 2008/08/09 (土) 00:31 ◆ ゾンド :こちらとしても、最初期に率直な提言を行っていれば、このような諸々の浪費はしなかっただろう。精神の自立以前に、情報だけが注ぎ込まれたことが原因だと、自戒はしている。 …ではそれならば、敵ではないものとは、戦えないということだろうか?(発言もそこそこにして、撫で付ける掌から水気の多い髪の塊が横滑りし、憤懣遣る方無いといった風情で腕組みをする女の方へ動いて行った。屋店の前で何の言い訳もせぬままで一礼して、女の射るような視線を後頭部で迎えた。銅貨と銀貨ばかりが混ぜこぜに含まれた布袋を差し出すと、女はあからさまな溜め息を大きく一つ吐いて、人差し指で引っ掛けるように受け取る。)我々も、人の感情に対しての方策は、まだ無力に等しい。教唆に感謝する。(顔を上げて、大男の視線を正面から見据えたぐらいが、それにとってはやっとの事だった。秒も経たずにぐるりと向きを変えると、人ごみの中も頓着せずに、夜へ紛れてしまう) 2008/08/09 (土) 00:57 ゾンド【退室】 (2008/08/09 (土) 00:57) ◆ ビッツ :そうだな…敵じゃないものとは戦わんね。もっとも、昨日の味方が今日の敵ってこともあるンだがな…今日のお前は、とりあえず味方だよ。(くすくすと笑いながら、自分に背中を向ける相手を見送る。袖の下を渡す姿を眺めながら篭手に包まれた左腕を一振りすると、中にたまっていた水がいくらか地面に落ちてぴしゃりと音を立てた)難しいことを考えるのは苦手なほうでなァ。ま、力になれたならいいことだが(感謝する、と言われてもこちらが感謝されるようなことは何も無い。僅かに肩を竦めて夜闇に包み込まれた相手の背中を見送ると、こちらもゆったりとした歩調で人波を裂いて歩き始めた。その後、要塞で篭手の水気を払うのに躍起になる男の姿が見られるだろうか) 2008/08/09 (土) 01:10 ビッツ【退室】 (2008/08/09 (土) 01:10) HIGHLAND FORTRESS 峠の要塞(閉鎖しました) http://h-f.sakura.ne.jp/kariken/index.html BACTERISM MATRIX http://bacterism.matrix.jp/ PCキャラページ http://tryx-quad.sakura.ne.jp/zond.html