題名:命の数え歌 登場隊員:ゾンド・エル(ケッペンバウム要塞) ゾンド@医療棟【入室】 (2008/09/07 (日) 23:59) ◆ ゾンド@医療棟 :(建前・名目や書類上こそ、この建物は\"医療棟\"と呼ばれてはいる。遠くない昔に一報が入ってから、要塞そのものが医療の砦と変わり果てて久しく、今夜はケッペンバウム要塞担当の負傷者が収容される最終日だった。この一帯において日付や鐘の音は在って無きが如くで、屋内や中庭も含め、そこが人の入れられる用地であれば、何時果てるとも知れぬ過酷な時間がそこかしこで流れている筈だった。悪天候の夜中の門番だけは、実は比較的負担の嵩むものでもないのかも知れない。最終日に担ぎ込まれる怪我人という人々は、傷の軽さ故に後から訪れた者が多い、心身が安定し、搬送役も十分に果たせるくらいの兵も少なくなかった。) 2008/09/08 (月) 00:00 ◆ ゾンド@医療棟 :(或いは、要塞に至るまでの帰途の上で呼吸が絶え尽し、本人も誰も望まぬまま、兵士から荷物と転じてしまった彼らのような者達の方が、数の上ではむしろ多いのかも分らない。残暑による高温、降雨の齎す多湿は、遺骸の扱いに殊更慎重さを要求させる。不審者を退ける為の門の番とは名ばかりで、判別と隔離と整理が、そこの任務となっていた。屈強ではあるが、気配に気迫の乏しい隊がまた一隊門前に訪れると、彼らの前を塞き止め、身分を認証すると申し出た者が在った。) 2008/09/08 (月) 00:11 ◆ ゾンド@医療棟 :(数えられる人影は、六人。2列の縦隊を組んでいる。前衛の二人はむしろ痩せた軽装の兵だ。どうしても照明に乏しい場所だった。手帳に顔を近づけて、所々掠れた文字を覗き込むように読み取る。まず、この二人には認可の言葉を告げて、後ろに控えている4人の元へと、にじり寄った。) 2008/09/08 (月) 00:25 エル【入室】 (2008/09/08 (月) 00:32) ◆ ゾンド@医療棟 :(この4人こそ、事態がこうなりさえしなければ、部隊配置は前衛の兵士だったのだろう。彼らが携えていたものは、農作業でよく用いられるような小型の牽引台車。荷台に載っているのも、背格好とサイズのよく似通った二つが、防水の幌で覆われている。4人の誰何もそこそこに済ませて、彼らの容態を見せてくれるようにと願い出る。彼等の瞳にどのような感情が浮かんでいるかは覗いようも無い。) 2008/09/08 (月) 00:39 ◆ エル :こちらで、――ええ、身分証の用意をお願いします。(ばしゃり。雨に濡れた地面を踏んで、新しい灯りを伴って現われた青年は一人ではなかった。要塞で仕事をしていた東区の軍医を連れ、やや急ぎ足で。)すみません遅れましたー・・・(引継ぎの時間は過ぎているはずだ。控え目な声で到着を主張し、連れてきた人を待たせて、検問を受けているらしい人たちの先、同僚がいるはずの方へと回る。) 2008/09/08 (月) 00:40 ◆ ゾンド@医療棟 :…来てくれた事実だけを鑑みても、感謝を述べたいと思う。(同僚の到着を確かめると、一隊の処遇に是非をつける為に、無言の目配せでしかなかったが、それの助力を請う。荷台の後部から回って左側。硬直してはいるが、死後一日以上も過ぎているだろうか。失血か衰弱か、或いは両方か、いずれにせよ、神経も麻痺と疲弊の極致にあって、彼は苦痛と孤独の中ではなく、仲間の見守る内で眠りに就けたのだろうか。) 2008/09/08 (月) 00:49 ◆ エル :(遅れた理由といえば、この青年の横にいた軍医の仲間を別のところに案内していたからなのだが、それを説明する暇もなかった。門を通過しようとする人々に敬礼をして、早速仕事に取り掛かる。)・・・要塞からの指示は、どのように?(確認した相手は、既に怪我人から遺体へと変質していた。一瞬苦痛を覚えたような顔をし、しかしすぐにそれを打ち消す。門番の仕事は殆どやらない人は、今日初めて人不足で駆り出されており、無念の結果がどこに行き着くのか分からず、ゾンドに問いかけた。) 2008/09/08 (月) 00:55 ◆ ゾンド@医療棟 :(左の彼に注意を向けていた時間は、その刹那だけに過ぎない。弔いの言葉も零さない少年に、剣呑な空気が僅かにに過ぎっただろうか。エルから掛けられた質問に答える前にもう一人の容態も把握しようと、此方の幌は自分の手で取り払った。 彼は、生きてはいる、呼吸も安定し、脈も一定で力強い。目立った外傷も無いが、健康な兵への処置としては著しく不合理に見える。怪訝な面持ちで周囲を眺めると、『起きないのだ』と、隊の一人が呻く。) 2008/09/08 (月) 01:06 ◆ エル :(かけられていた幌を戻し、軽く頭を下げて弔いとした。長い時間をかけないのは、次が待っているからで、)そちらの方は、医療棟の中に――すぐに医療班に報告を入れて。場所はあるはずです。(ゾンドが確認した側の人を見、青年は口にした。他から聞いた話だが、医療棟は若干のスペースを確保したらしい、と。――青年が連れてきた軍医が寄ってきて、『私がついていく』と主張する。軍規手帳が提示された。) 2008/09/08 (月) 01:13 ◆ ゾンド@医療棟 :(控えてある救護用担架を設えると、眠りこける兵は軍医の指揮の元、幾人かの同僚の手によって医療棟内へ運ばてゆく。漠然と、背骨の髄か、その近辺が危険なのだろうかと根拠も無く思うが、その意見は決して口に上らず顔にも浮かばない。台車に寄り添うように場に残った者は、隊の長だろうか、雨に濡れた前髪に遮られてはいるが、恐らくその奥は据わり切り、遺体の処分について会話しようとしても、話の切り出し方には、いつも躊躇してしまう。万策は尽き、傍らに立つ同僚の様子を覗った。) 2008/09/08 (月) 01:27 ◆ エル :(軍医と怪我人を送り出し、門は一時静寂に包まれた。雨音は続いていたのだが、それでも沈黙は痛いほどに静かだ。・・・こんな仕事は慣れていないのだが、そうも言っていられない。少年の方を頼るわけにもいかずに僅かに頭を傾けて地面を見ていたが、やがてその担当であるかのように、口を開いた。)このような場合、要塞からは速やかな対処を望まれています。引き起こされる災害を防ぐ為に。・・・書類を作らなければなりませんので、お願いできますか。(この時期この天気、遺体も生き残った人たちも、長く置いておきたいとは思わなかった。言う人の前髪は相手と同じように濡れてはいたが、まっすぐな視線は遮られず。はっきりとした視界がまた、こちらの苦痛を増幅させる。) 2008/09/08 (月) 01:40 ◆ ゾンド@医療棟 :(髪も髭も伸び放題、隈と泥と砂埃に塗れた生気の抜けた顔が、青年の一言で憤怒に染まる。怒髪は天を衝き、片腕の筋肉を膨れ上がらせ、一直線に声の主を見据えながら、渾身の握り拳を振り翳した。) 2008/09/08 (月) 01:50 ◆ エル :(言いきってしまった後、避けるほどの元気がないのが半分、避ける気がなかったのが半分でそのまま殴られた。綺麗にきまって、暗いも明るいもあやふやになるほどの衝撃の中でもよろめきこそすれ、倒れない。鍛えられているだけはあった。)・・・・お願いします、(誰もこういうときの対処法など教えてくれなかった。教えを請うようなものでもないのだろうが。だから青年は繰り返して、衝撃の次にくる熱を感じながら顔を上げた。) 2008/09/08 (月) 01:57 ◆ ゾンド@医療棟 :(肩を振り切った勢いをそのままに、兵士は水の溜まった轍に膝を付く。嗚咽とも咳ともつかない声を喉から搾り出している。 エルを倣うように、遅きに失したもう片割れの少年が、似たり寄ったりの言葉を掛けるが、エルを含めた誰の言葉も、もう男の耳には届きそうにないのかも知れない。年端も行かぬ幼子のように顔を覆い、屈強な大男は背を丸め、みっともなくすすり泣くばかりだった。)  …遺骸の輸送を、準備だけでも整えたい。 2008/09/08 (月) 02:08 ◆ エル :(殴られた痛みではなく、人の反応に顔を顰め、その沈痛な面持ちのままゾンドの提案に頷いた。それから痛む頬に手をやろうとして、灯りがまだ手にあったことに気付く。倒れていたら惨事になっていたかもしれない。幸い、油が零れた様子はなかった。)手配、は、医療棟ですか。要塞の方・・・?(まだ頭が揺れている中、素人門番は同僚に尋ねる。右手で頬に触れたら血がついた。口が切れたらしい。) 2008/09/08 (月) 02:13 ◆ ゾンド@医療棟 :医療棟に運び込む必要は無い。連絡も同様。要塞側にはまずサーコートと手帳を預け、身元を確認して貰う。(医師団の貢献による所が大きく、不幸中の幸いに、息を引き取った者の数は最小限度に抑えられている。遺体を安置する場所は、生者の手や目に付き難い場所でなければならないという点が悩み所だった。) 伝令精霊の使い方は知っている?我々は、用法に疎い。心療の得意な軍医か、それとも彼より高位の兵の協力が要る。 2008/09/08 (月) 02:24 ◆ エル :分かりました。それではそちらの準備はお任せします。・・・連絡は僕が。多分、少しかかるでしょうから。(呼ばれたと分かったのか、下りてきた緑の光が一つ。それを捕まえながら言って、ゾンドが言ったことを他の情報なども交えて吹き込み始めた。連絡の最後は、医療棟門前、所属隊はどこ、という最終確認で締められた。)すぐに寄越してくれる――そうですが、鐘が鳴ったばかりなので人を探すのに時間がかかるかもしれません。 2008/09/08 (月) 02:32 ◆ ゾンド@医療棟 :この台車を続投させ、遺体ごと要塞付近まで運びたい。鐘が鳴るまでは交代の要員も来てはくれないだろうけど、我々が運ばないということは、ここに放置すると同義となってしまう。すぐに定位置へ戻れると思うから、あなたにこの場を任せてしまっても良いだろうか?…彼については、あなたに処遇を決められる権利と義務が備わってはいるけれど。(天候は、本降りから小雨に勢力が弱まったようだ。要塞への道中に交通事故を引き起こす可能性が減り、それは幾許か有利な要素となる。) 2008/09/08 (月) 02:43 ◆ エル :(青年は、疲労の色濃い人のところに寄っていって脱いだマントをかけようとしていた。ただでさえ弱っているのに、風邪でも引かれると厄介だ。嫌がられても押し付けるぐらいの気持ちでいて――聞えてきたゾンドの声に振り向く。)はい。大丈夫ですよ。お願いします。僕はどうも、そちらはできそうにありませんから・・・・(もう少し仕事内容を聞いてから来たかったと思う。腫れはじめた顔を苦笑いにしながら応じ、兵士を見下ろす。どうするのが最善かなど、考えつきもしなかった。) 2008/09/08 (月) 02:49 ◆ ゾンド@医療棟 :(台車の輪郭が薄暗がりへ溶けてから数分も経たずに、医療棟から先程の一団が出戻って来た。寝こけていた同僚は負傷が原因ではなく、栄養の点滴ですぐさま意識を取り戻したらしい、当然昏睡からは遠いもので、嫌に陽気な雰囲気を纏う彼らだけが、浮いた空気を撒いてている。マントを被った男もやはり部下の表情を狐につままれたように見ていたが、すぐにエルのマントに包まるようにして狸寝入りを決め込んでしまった。囲まれた部下がそれを見て果たしてどう思うかは、きっと彼の人望が白黒を付けるのだろう。) 2008/09/08 (月) 03:01 ゾンド@医療棟【退室】 (2008/09/08 (月) 03:01) ◆ エル :(明るい顔で戻ってきた人たちにこちらも目を瞬かせていたが、会話でなんとなく悟った。少年が運ぶ遺体の事など告げられるはずもなく、にこりと笑いかけながら、伝令精霊で呼んだ人を待つことにする。生に笑い死に泣き、何故、と問い続ける一日は長く、前にやった事を、思い出した。)・・・同じですねぇ、ケルンと。(ぽつりと落ちた呟きを聞いた人は、いるだろうか。暫くの後、駆けつけた医者たちが兵士たちの様子を確認し、要塞へと連れて行く。門番の仕事を引き継ぐ人間がいたなら、青年も同行するだろう。) 2008/09/08 (月) 03:09 エル【退室】 (2008/09/08 (月) 03:09) HIGHLAND FORTRESS 峠の要塞(閉鎖しました) http://h-f.sakura.ne.jp/kariken/index.html BACTERISM MATRIX http://bacterism.matrix.jp/ PCキャラページ http://tryx-quad.sakura.ne.jp/zond.html