題名:沈む涙 登場隊員:ケッツァ・ゾンド(イルマ要塞) ケッツァ【入室】 (2008/12/07 (日) 22:10) ◆ ケッツァ :(雨降りの夜の運河は暗い。こんな天候でもちらほらと船の姿はあるようだが、普段に比べる随分と静かなのは確か。休むこと無く落ちてくる雨粒に叩かれて水面は賑やかに騒いでいたけれど、水中深くに潜ってしまえばそれも気にならない)………暗い、(運河の底から水面を見上げる人魚が一人で呟いた。すぐ隣には、細身の水蛇が1匹寄りそっているだけで他に魚の姿もない) 2008/12/07 (日) 22:16 ◆ ケッツァ :……灯りは遠い、空が見えない(警戒心よりも好奇心が勝って近寄ってきた水蛇を傍に置きひとりぼっちを免れた人魚、濃紺の向こうを仰いでいた顔を隣へと下ろして)けれど……私には、あなたが見える(漆黒の闇にはまだ明るいその暗闇の中で、水蛇の体に手を伸ばす)………ここは、まだ明るい 2008/12/07 (日) 22:26 ゾンド【入室】 (2008/12/07 (日) 22:32) ◆ ゾンド :(小舟が運河を昇っている。一人二人が乗れればそれで精一杯の、素朴な造りの舟だった。河口の方角からゆっくりとした船足で、徐々に上流へと向かう小船の尻には、釣りに使われる重石だけが水中に垂れ下げられている。鉛直に伸びている細い糸には、重石の他に、餌も針も付いていない。水滴を模られた重石は、運河の底をすりびいて、微量の泥と粘土を撒き上げながら、舟に曳かれて黙々と西へ。人魚と蛇の淵へと、無遠慮に進んでいた。) 2008/12/07 (日) 22:33 ◆ ケッツァ :だから……(水蛇の体は、ひやりと感じた。ここの水温とそう変わらないはずだろうに、小首を傾げて)…ここは、明るい。…眩すぎず、ちょうど……悲しむに、いい……(何度か水蛇の身をさすっているうちに、相手はいち早く近付く何かに気付いたようだった。するりと身を翻ると行ってしまう)……さようなら(置いてけぼりになった手をひらひらさせ、泳ぎ去る水蛇を見送るのに変えて、ようやく人魚も近付くものに気がついた。するりと身を起こしもうもう煙を起こすものへと近づいていく) 2008/12/07 (日) 22:38 ◆ ゾンド :(糸は遅い。水の奥にあるものに、まるで頓着の無い歩みが仇となったか、水底に沈む――古い水蛇の亡骸か何か、細長く白いものに、重石が引っ掛かった。ぴんと張り詰めた糸の戒めは容易く外れ、小さな重石は底に埋もれ、上には泥が覆い被される。糸の異常からほどなく、真上の水面に浮かぶ舟は停まった。正体を無くした糸は引き揚げられ、数分と経たずに、同じ重石が結わえられた糸が、性懲りもなく河底に降ろされて来る。奇しくも今回は、人魚の頭上からである。) 2008/12/07 (日) 22:54 ◆ ケッツァ :(煙の向こうのその形が判然とするかしないかのところで、それは歩みを止めてしまった。どうしたのだろうと近寄れば、水蛇の亡骸に身を寄せるようにして重石が一つ。泥を被ったそれを軽く払ってみるとその形は涙形をしていた)……涙が一粒。泣いているのは、誰?(この朽ち果てた水蛇のために、誰か泣いているのだろうか。涙が落ちてきた天を見上げると、ちょうど次の一粒が落ちてくるところ)………ぁ(出たのは悲鳴ではなく、間抜けな声一つ。慌てて身をくねらせたものの避けきれず、ごす、と腰のあたりの鱗を1、2枚削られた)…泣いているのは、私……(鱗のはげたあたりをさすりつつ、落ちてきた重石をちらりと睨んだ) 2008/12/07 (日) 23:06 ◆ ゾンド :(図らずも人魚を研磨した重石は、反動で振り子のように長々と暴れながら、暗い水中をぐるぐると彷徨う。舟は進まず、重石によく似た水滴形の船底から、頭一つの影が浮き上がって、水面を俯瞰した姿勢のままで固まっていた。やがて疲れ果てた重石は、二度と河底にまでは沈まない。鈍く淡い光沢によって、人魚の瞳を反射している。) 2008/12/07 (日) 23:25 ◆ ケッツァ :笑っているの…?涙が、私を笑うなんて!(ぐるぐると逃げては近付く、まるでからかうような涙粒の動きにぷうと頬を膨らませたものの、そのうち大人しくなってしまった姿に表情を緩めた)今度は睨めっこ?……私を映してどうするの?(止まってしまった重石に手を伸ばして、それから糸が続いているのに気付くと、くいくいと軽く引いてみる。つい先日の釣りの件が頭をよぎったから、引いた後すぐ手は離したけれど) 2008/12/07 (日) 23:34 ◆ ゾンド :(糸は不意を突かれた。その瞬間だけは、主にとても軽く摘まれていたから。細くしなやかな糸は重石に引かれるまま、闇の底へと落ちて行く。もはや誰のものでもなくなった糸は、自然と河口に向かって流され、すぐそこで行き合った、先の水蛇の亡骸にしがみつき、動かなくなった。尾が揺らめくそれは、まるで得体の知れない線虫のようなものではあったけれども、確かにそれをひしと抱き締めて、離さずに留まっている。船上のひとは未だ、河面と睨み合ったまま、微動だにもしていなかった。) 2008/12/07 (日) 23:52 ◆ ケッツァ :(てっきり引き戻されると思った糸は、己が手を離すとゆるゆると降りてきた。それは、まるで最初から決まっていたかのように亡骸の方へと近付いて絡み付く。もちろん糸の先にある涙もそちらの方を向く)………悲しい、悲しい(もう一度呟いてから、涙を落とした水面のものを思った。暗い底からでは、こちらを覗き込む人の形などわからなかったけれど、真っ直ぐに糸の伸びていた方向へとあがって行こう。きっと涙をこぼした誰かいるはずだ)…泣いているのは、誰? 2008/12/08 (月) 00:00 ◆ ゾンド :(運河の上ではたった今本降りが収まって、細かな針が肌に刺さるような、にわか雨へと勢力が弱まっている。背を曲げて舟に寄り掛かるそれは、酷い濡れ鼠だった。水を吸ってあちこち纏まってしまった髪の端々からは水の流れが湧き出て止まず、それは睫も、顎も、例外ではない。河面に顔を、次いで頭を浮かべた人魚とは、互いの頭同士をぶつける所だったが、不幸な事故からはすんでの所で首を引いて逃れる。濡れそぼったひとが返事を述べるのは、遅い。人魚の前で左に頭を傾げればまた、右に振れた。)誰…?…あなたの、顔は…濡れている、けれど。 2008/12/08 (月) 00:19 ◆ ケッツァ :……っ(ぱっと開けた視界のすぐそこに人の顔があって、驚きに息を呑んだ。今度は相手のおかげで、かろうじて衝突はしなかったけれど)……あなたも、濡れている。ずぶ濡れのそれは、涙ではないの?……運河の底に、大粒の涙、二つ。泣いていたのはあなたでしょう?(相手の答えを受けて、こちらも首を傾げて尋ねる) 2008/12/08 (月) 00:26 ◆ ゾンド :…どうして、そう、思うの。大粒の涙自身は、泣くことは、できない?…泣き、泣いたのは、涙そのものでは?(舟の上には、簡素な木箱が一つ二つ。灯りは雨水に掻き消され、剥がれの目立つ櫂と、それだけだった。) 2008/12/08 (月) 00:41 ◆ ケッツァ :………ああ、そうか。そうかもしれない……あれが、涙が泣いていて(なるほど、と一つ頷いてから)涙は、横たわる水蛇に寄りそって泣いていた……涙は亡骸を見て泣いたのかもしれない。泣いたのは、亡骸だったかもしれない。あなたは……涙の消えたあとを覗き込んで、泣くことを思っていた?(水面を覗き込んでいた姿に、釣り人ではないのかと問い掛けた) 2008/12/08 (月) 00:50 ◆ ゾンド :さっきの子は…寒い日に、急に暖かい部屋に連れ込んだ時も、よく泣いてしまう。……そう、水蛇が、居た…。(問いにもまた黙りこくったが、それは言い淀むような、どこか返事に窮した空気を纏う。じっと水面を見渡した後、意を決して木箱の蓋を開けて、中から大きな巻き尺を取りだした。几帳面に丸められたそれを引っ張って、少しだけ伸ばしてみると、それの体は白くて平べったく、腹には綺麗な縞模様が一定の間隔を保って刻まれている。蛇の抜け殻…よりも、見た目としてはウナギの開きによく似ていた。手元に載せて、人魚に指し示す。)…これが、何というものなのか…まだ、よく分からなくて。使い方は…この作業に必要で、それから類推するらしいのだけれど。あなたは、知っているだろうか? 2008/12/08 (月) 01:10 ◆ ケッツァ :涙、寒いところが好きなのかしら、それとも驚くと泣いてしまうのかしら……(泣き虫な涙の話に、今頃底で泣いている二つの姿を思い返しつつ。指し示されたものはついさっきまで水中で見ていた水蛇によく似た形に見えた)それは……水蛇かしら?…水に入れたら泳ぐ?…ゆらゆら流され、仲間を呼ぶ?(うううん、と首を傾げながら思いついたことを言って) 2008/12/08 (月) 01:19 ◆ ゾンド :少なくとも、水槽に居るものや、まだ運河に住んでいる水蛇達とは、違うものでは?要塞の兵士より受け取ってから、この場に出してまでも、全く動かないし…。手触りも、水辺のもの達よりは、むしろ植物の繊維みたいで、ごわごわする。…水に入れれば、元に戻る?(巻きの中心に人差し指を入れてくるくる回すと、それは尾っぽの方から徐々に水中に没して行くと、人魚の言うとおりに、ゆらゆらと上下に揺れている。暴れも逃げもしなければ鳴きもせず、とても大人しいものだった。)…でも、大事な預かり物だから。不慮の事態は、起こしたくない。 2008/12/08 (月) 01:31 ◆ ケッツァ :(水中に降りた姿を確かめようと一旦潜って、その肌に触れてつついてしてみたけれど一向に反応はなかった。しばらくそうして諦めて再び顔を出す)……大人しい、元気がない、生きていないみたい…やっぱりニセモノなのかしら?………ごめんなさい、どうするものか、私にもわからない。…使い方、水に暮らす誰かに尋ねてみるわ(大事な預かりものと聞けば、どうぞ引き上げてと手振りで示す。謎の長いものの正体については、人魚も気になったようで情報収集する気は満々) 2008/12/08 (月) 01:43 ◆ ゾンド :我々も後々、要塞の備品を管理する方に、機会を見つけて子細を伺ってみようと思う。あなたによる情報にも、多く期待したい。(素直な礼のつもりで、かくりと会釈をした。冷たい淵からの巻き揚げにかかれば、ぼろ布で水を拭い取りながらの細々とした作業だけれども、水の中に垂らした距離の短さもあり、さほどの手間はかからずに済む。尻尾の端に咥えられている、本来は重石を結わえ付けるべき紐で体を固定してから、巻尺は優しく木箱に封じられた。)道具を失逸してしまったから、我々はもう、要塞に戻るつもりだけれど、あなたは、これから、何処へ? 2008/12/08 (月) 01:56 ◆ ケッツァ :ええ、使い方が知れたら聞かせて。お互いの情報を集めたら、きっと一番良い使い方がわかるわ(会釈には笑顔で頷き返し、続いた言葉にきょとんとして)あら、あの涙は借り物だったの?……私は、そう、それなら、沈んで泣いているあの子らを連れて帰るわ。大丈夫、まだ夜明けまでは長いから、ちゃんと宥めて帰してやれると思うわ(ひとりでそう結論づけると、おやすみなさい、船上の人へとひらりを手を振ってから水中に潜って消えた。沈んだ重石は夜のうちに亡骸から離されて、朝の早いうちには魚人によって陸に引き上げられただろうか――) 2008/12/08 (月) 02:04 ケッツァ【退室】 (2008/12/08 (月) 02:04) ◆ ゾンド :(此方としては、思いがけない申し出だった。だが、重石の二つといえども、要塞との信頼関係を踏まえれば、用意に諦め得る小さな事ではない。正直に報告だけを陳べる予定でいた今にあっては、人魚の存在は渡りに舟であった。小さく手を振り返して人魚を見送れば、だいぶ舟の中に溜まった雨水を汲み取り、後は要塞に戻るだけだ。翌朝、亡骸から、彼女に、そして魚人の手を経由して、水滴の贋作は無事に、少年の掌に帰り着けたという。) 2008/12/08 (月) 02:17 ゾンド【退室】 (2008/12/08 (月) 02:17) HIGHLAND FORTRESS 峠の要塞(閉鎖しました) http://h-f.sakura.ne.jp/kariken/index.html BACTERISM MATRIX http://bacterism.matrix.jp/ PCキャラページ http://tryx-quad.sakura.ne.jp/zond.html