題名:未明の空 登場隊員:ティア・ゾンド(バーパジーラ要塞) ティア【入室】 (2009/05/03 (日) 23:06) ◆ ティア :たとえば――(しろい、柱と柱のあいだ。林のように並ぶ聖域は、たとえ空に雲がかかっていなくても、いくつも影が折り重なって、奥に行くにしたがって、翳っている)たとえば(湖の波のように、風がふかなければ波立たない波。気まぐれに月がくもから顔を出すように、声)たたかえ、たたかえと、かぜがせをおすならば(真白な建造物の浅いところで、柵や生垣、道に隔たれたむこう側、警備の兵士へ歌うよう)ほのおは、みかたについたのだろうか 2009/05/03 (日) 23:15 ◆ ティア :たとえば(その、たとえ話は、聞ける兵士にとって、きっと楽しくはない。水路にたゆたう木の葉のよう、ながされやすい憂鬱な歌声は、明るいことばを紡がなかった)ふちへ、ふちへとぬまにしずんだならば(しろい林の入り口で、真白なゆるゆるとした服を着て、ひざを抱える。ときどき、傾いたり、座りかえるのは、反響する声を確かめるため)そらは、そのてをのばしたのだろうか 2009/05/03 (日) 23:24 ゾンド【入室】 (2009/05/03 (日) 23:35) ◆ ゾンド :(薄らぼんやりと立ち止まっていた人影が、そのときだけは虚空を見つめる猫のように、ある一点を凝視し始めたのは、いつ頃からだったか誰も分からない。時折通りがかる警邏隊はその後姿を見て、なにか気の毒なものを見る様な視線を投げたが、ひとが眺めているのは黒灰色の水面ではなく、重く垂れ込めて星明りを通さない雲り空だったことと、少年の服装が何の変哲もない軍服であったことなどから、関心をまるきり失って道を行ってしまう。丁度三組目のツーマンセルが通りの角に消えたところで、少年は舟を呼び、運河を渡った。)…あ…………。…………か……………。(カテドラルの土地に入ってすぐそこに立ち止まれば、不明瞭な発言は半ばで途切れ、口を閉じて押し黙った。特定の意味を持たない言葉が、波を持って空中を通る。それが闖入したときの鈍くぬめった軍靴の音は、カテドラルに入ったとしても、反響も増幅もされなかったようである。夜のカテドラルは、季節柄冷えなくなって久しい。昼の喧騒は時間と共に失われたとしても、変化した空間の曲率は極めて微弱なものだった。) 2009/05/03 (日) 23:40 ◆ ティア :たとえば(くらいくらいところへ、声は消えていくようで。でも本当は、どこかで誰かが歌いかえすように響きあって、声は消えずにどこかへ歩いていって、出口を見つけてかえってくることはないだけだ)またぬ、またぬときみがささやいたならば(そしてそう、壁のはしまでたどりついた声がいたとしても、声には、また喉までかえってくる足はないのよ。彼らには、ほんとうは、翼も手もない)わたしは、あしをとめたのだろうか(俯いて、地面へ問えば、ながれるように金の髪が肩からすべり落ちた。指の背で金糸をすくう仕草には、人目を気にしたようすはなくて、肺は、次のことばのために空気を吸う) 2009/05/03 (日) 23:44 ◆ ゾンド :(門を守るひとびとに断りを入れるも、手帳を晒せばそれきり何も言われなかった。正面の扉を開ける動作は非常に慎重に為され、それでも静寂に満ちた夜には、重く軋んだ木擦れの音の響きは避けられない。薄い隙間だけが開いたその出入り口に、前後の奥行きの少ない身体を滑り込ませるように押し入り、正面のそのひとの方を向いたままで、扉は後ろ手を使いつつ閉じられる。篝火に惹き込まれる蛾のように、特に意義を持たないまま来てしまったけれども、いざその光景を前にすると、妨害工作という単語が脳裏に浮かんで固着したまま離れなかった。かれの動機が、習熟の為か、個人的な発散かは分からないけれども、せめて、かれが満足するまではこのまま黙っていたい。) 2009/05/03 (日) 23:57 ◆ ティア :(ながれた揺れた金糸は、指先に絡むこともなく、くせも少ないやわらかなもの。とてもおとこの髪ではなかったけれど、それだけ、気にかけているものだった。つめを伸ばすのはずっとずっと昔にやめてしまったし、お化粧だって、最近ではとんとしなくなってしまったけれど。髪に櫛をいれるのは、いつものこと)…おもえばとおく、あめのそぼふるこうやまできた(自己愛の表れである長い金髪を背中におくり、声にするために息をして)たとえば(歌うためにことばを使って)――それは、かこのはなし(それは。ずっとむかしの話。裸足のあしの、くるぶしやかかとを撫ぜて、そのかたい皮膚をかさついた体で触れた飛蝗に笑う。彼は、歌なんてきいていないし、こちらをみてもいないから、なんとも思わずにいってしまう)…例えば、――おれは、どうしようかしら(それは。歌ではなくて、いってしまった飛蝗へ問うた) 2009/05/04 (月) 00:12 ◆ ゾンド :(己にとっては判別の難しいものの一つではあるけれど。先まで確かに歌であったものが、歌でない囁きに取って代わられているように思えて、閉塞していた口蓋はなにかを発しようとして一度だけ半開きになった。またしても、塞がれる。閉じていても言葉は出せるものではあったけれども、その前に彼の問うた先が自分ではないように思えてならなかったからだ。小さなバッタがどこか遠くへ行ってしまう様子を、光を反射しない瞳孔を丸く開いて見詰めていたけれども、その子も遂に目の届く範囲からは居なくなって)あなたの、いまの、それも、魔法の、一種なの?(言葉の意図が解らなかったから、こちらの発言もちぐはぐなものになるしかない。) 2009/05/04 (月) 00:25 ◆ ティア :(歌も、問いも、くらいしろい柱のあいだと隙間に入り込んで、飛蝗と一緒にいなくなってしまって。答えなんてかえってこないから、最初からそう知っているような顔をして、俯いた面を、伸ばす足先の動きと一緒に持ち上げた。あしを思いきり伸ばして、うでもからだも上へもち上げて伸びて、息をする。酸素が全身に回るようで、反対に、力は抜けていくようで)――おれ、魔法は使えないわよ(からだから、ほんとうに力を抜きながら、答えではなくて、問いがやってきたほうをみた。いつの間にか、くらがりに潜むよう佇んだすがた)いたの。…なに、要塞で、なにかあった?(誰にも、何も言わずにきたけれど、足跡は消していない。彼がいたって構わないけれど、なにかあって呼びにきたのかしらって) 2009/05/04 (月) 00:38 ◆ ゾンド :(寝疲れた猫のように上へ上へと縦に身体を伸ばす姿を、不躾ながらじっと眺めていたけれど)唄で魔法を使うひとも居るから。あなたもそうであるのかもしれないと、思ったから。……もとから、既知の抽出サンプルに乏しかったから。(かれがそう言うなら、確かに使えないのだ。名簿にもそれを裏付ける単語が氏名の隣に付記されていたのだから。)いいえ。とくに、大事と言うべき出来事は、何もない。強いて言えば、二段ベッドから落ちた兵が居たという話くらいしか。(少なくとも、この街は自分の見かけ上、それなりに平和ではあるようで。夜にも昼にも眠れない種族は、非番の深夜帯であっても、夜警の人々に紛れていつもこの辺をうろついている。)この活動は、我々の自主的な、散策。………うたが、聞こえたから。関心を魅かれて、ここまで来てしまった。 2009/05/04 (月) 00:50 ◆ ティア :ええ、いるわねえ。おもしろいわよね…どうやっているのかしら(影のようにいる子の視線は、今どこをみているかわからなかったけれど、彼の言葉に大きくうなづきをみせて、ふたり、思いうかべる。歌う彼と彼女は、だけれど、自分とはまったく違った)あら、たいへんじゃない。頭、ぶつけてないといいわね、その人。こぶができたら、笑われてしまうわね(誰だか知らないけれど、寝惚けて落ちたのなら、誰かに笑われてしまうでしょう。二日酔いだったら、偉いひとに。だって、もう自分が笑っているから、笑われるのは確かだ。その顔は、そこへ立ったまま、淡々と語る子に笑いかけるようにもみえた)夜のお散歩――ね。…おれ、そんなに大きな声で歌ったかしら。寝ているひと、起こしていないといいけれど(そうして、僅か眉を寄せた。彼、どこから聞いてきてくれたのか、知らないが) 2009/05/04 (月) 01:03 ◆ ゾンド :機会を見て、訊いてみたいとは考えているのだけれども、納得の行く説明が聞けるとは、予期していない。興味は著しくても、彼ら彼女らが語りたがらないのではないか、と、思う。(黄金色のひとの頷きに合わせるように、等しいくらいの首肯をついた。瞳の焦点の合ってない子供の視線は、下手に左右の角度が違っていればそれだけで斜視を疑われかねないものだ)我々としても、頭蓋の安否は心配だけれど。……でも、兵の話はあくまで又聞き。間接的な情報だから、要塞に帰った時には、尾鰭がついているかもしれない。(たおやかな笑いを零すひとを見て、その笑顔から安堵の心地を拝借できた。医務室行きか、そのまま寝てしまったのか。こうしてかれの笑みを作った張本人が、瑕疵を気にしないプライドの高い兵でなければいいと思う。)……??……声の大きさは、一般的な範疇に収まる程度のものに聞こえていたけれど。でも、カテドラルの近場にいた我々には、聞こえたから。(眉を寄せたかれに、言い訳のような言葉。本質的には距離の問題ではなかったけれど、自分でそう言った子供にとっても、気付いてはいない事柄だった。聞こえるか聞こえないかの是非。白と黒しか判別できないものは、幼児の囁きも訓練場の喧騒も、どれも等しい。) 2009/05/04 (月) 01:21 ◆ ティア :わからないから、魔法なのだものね。わからないもの、むりに説明てしまって、へんな形ができてしまったら。つぎから、魔法ではなくて、それ、になってしまうのかもね(みえないものに、むりやり形をあたえて見えるようにするから、みえないものは、まったくの別物に変わる。それは、そこかしこによくあることで、幽霊を知らないものにとって、幽霊を知っている、怖いと思うひとたちを理解できないのと同じ。祟りは信じるくせに、それがひとの姿をとると、途端に目盲いた気分になるもの)…そう。なら、帰ってみて、その話を聞かないなら、問題なかったってことね。カテドラルのそば、だけだったら…大丈夫かしら(彼の音の認識のしかたは、虹の根元がどこにあるのか程度にも、知らない。だけれど、言われたことばを言われたままに聞いて、そうだと思って行動することに、慣れすぎていた。違和感も、疑問も感じずに、微笑を瞬きで打ち消し立ち上がる。すべるような肌のしろい柱を撫でて、跳ねて、しめった土を踏む)でも、もう、帰るかしらね。大声でいたら、要塞でないと、どのみち迷惑でしょうし 2009/05/04 (月) 01:36 ◆ ゾンド :不確定であることこそが、自由度を生んでいる。汎用的に当て嵌まる、特定の形式を与えるということは、つまり、足を引っ張る頚木になる。(仮説の含まれる範囲を正しく言うならば、実に魔法のことだけでもない。精霊も、うたも、幽霊も、にんげんの感情も情動さえも、とき常軌を逸した発狂も含めて、見えないもの、己に直接実物を証明できないものは、一緒くたに『魔法』と似て非なるものだと混ぜこぜに考えていた。)裏付けの取れない流言蜚語を、まるで実際の事件のように言ってしまって、申し訳ない。 そう?外からは、それほど大声だったようには聴こえなかったけれど。カテドラルの内部によって、殆どの声量は減衰されているのだから、そう深刻に心配することはないのでは。(勢い込んで立ちあがったひとは、もうすぐ帰途に就くと言う。カテドラルの内壁に伝わるのは、細かい水滴が建物の外郭に染みる音で、これのほうがさきの歌声よりも、街の人々にとっては憂鬱であるかもしれなかった。)そう。では、門の警備隊に挨拶してのち、我々も戻ろうと思う。 2009/05/04 (月) 01:51 ◆ ティア :――だから、不思議、っていうのよね。不思議でないとおもしろくないから、おもしろくないと、わからないことだから(水を含んで、ここへきたときのように音を立てない砂は、べったりと足の裏にへばりついて、左右のあしを交互に踏めば、入れ替わるようにはがれたりくっついたり。尖ったものを踏んでも、石ころくらいならば怪我をしないあしには、ちょうどいいくらいの刺激。影に潜む彼のところへ、陰へ入るように歩むのがさきで、少しことばが遅れたのは、単に彼のことばを理解するのに時間がかかったせい。学問のあたまは、ないから)謝るようなことじゃあ、ないでしょう。だって、おれたち、そういうことたくさんしてるもの。でも、だれも謝ったりしないわ(うわさ話なんて、挨拶みたいなものだもの。陰に入って、すれ違うときに、まさに挨拶のようにことばをかけて、衣服の大雑把なドレープをひらめかせて門へとむかう。さきに門をくぐってしまうけれど、警備の兵士と一緒にそこにいて、もうひとりを待つ。靴音ではなくて、砂利の音が遠ざかるのは、そのあと) 2009/05/04 (月) 02:07 ティア【退室】 (2009/05/04 (月) 02:08) ◆ ゾンド :未定なものであるからこそ、魅力を生んでいる?公理が定理になってしまえば、証明の手段として利に適った、至って無味乾燥な扱いを受けてしまうかのように?(解らないものを征服しようとして、にんげんはそれに興味と関心を抱くのではないか。不思議なものは永劫に不可解な存在でなければ、けして手の届かない何事かでなければ、それは貪欲な人々に容易く自家薬籠中のものにされてしまうのか。どこもかしこも裸足で出歩くひとは、ひとびとの渦中である軍としても珍しい主義だった。いきもの全体でみれば、多数派ではあるが。遠駆けやら訓練やら、激しい運動には向かない主義だけれど、自分の知らない彼の仕事は、それでも十分に果たせる領域なのだろう。挨拶を残して先に行ってしまったひとを、長く待たせるのはこちらの主義ではなかった。内壁の彫刻に目を移すのもそこそこに、さっき来たばかりの門へ逆戻りに踵を返す。待っていてくれたひとと、門番に、堅苦しい敬礼ではなく会釈の一礼を含ませて。――二人連れ立って帰り着いて、そうして戻った自室で、思うことが、あった。) 2009/05/04 (月) 02:19 ゾンド【退室】 (2009/05/04 (月) 02:19) HIGHLAND FORTRESS 峠の要塞(閉鎖しました) http://h-f.sakura.ne.jp/kariken/index.html BACTERISM MATRIX http://bacterism.matrix.jp/ PCキャラページ http://tryx-quad.sakura.ne.jp/zond.html