題名:成長を見守る 登場隊員:ダンテ・ゾンド(ウィシドフィード要塞) ダンテ【入室】 (2009/07/26 (日) 22:26) ◆ ダンテ :…………。(空中庭園の片隅のベンチに座り、文字通り黙々と手元を動かしている男が居た。丁度室内の中で最も影となる場所を選んでの作業だが、特に苦にはしていない。傍らに小型のテーブルを寄せてきて、傍に置いたランプの光でどうにかなる程度のものだった。どうしてこのような室内の端に構えているかといっても、それほど深いわけは無いのだ。ただ、手元に生い茂っている白い花をつけた蔦の緑が何となく好きで、傍に居る。) 2009/07/26 (日) 22:31 ◆ ダンテ :(手元に握っているのは、白い男物のYシャツだった。男の右どなりには、うず高くそういった衣服が積み上げられている。ところどころに軍服の緑が混じっていて、その男は最早、一見すると非戦闘員の面持ちで、糸を通した針を手にボタンをつけ直していた。)……あん、痛い…、(時々、やる。指に針を僅か刺してしまう失敗を時折やってしまう理由に、注意力の散漫が上げられるかもしれない。雷の音のせいにしてしまうのは流石に愚かな話だが、基本的に十分な睡眠の足りていない男だった。) 2009/07/26 (日) 22:40 ゾンド【入室】 (2009/07/26 (日) 22:42) ◆ ゾンド :(こうして出入り口から体を通らせたとき、抜けてゆくのは決まって庭園の中だった。その他に通れる道など他にはない訳ではあるが、それでも、体の縦横に走る不快指数を別にしても、クロロフィルを透過したせいで緑ばかりの多い多年植物と、ほんの僅かな数の小さな虫どもを視界の端に掠める一瞬の情景などが、どこか思考の末端を沸き立たせるのであった。夜の今では、緑ではなく暗緑色となった水蒸散のトンネルを抜けて、そこには誰も居ないと思っていたから、)あ…………、……ん…………。(唐突に感じられた生物の気配に、語尾が掠れた声を微かに上げてしまった。上げたそばから声量を絞っても、もう遅い。無意識にであるが、葉っぱのトンネルの添え木に、手を沿えて寄り添っていた。)………こんばんは。(繕い物をしている男が誰であるかは、まだ分からない。痛い、という言葉はどうにか聞き取れたし、声の低さから男性であると判別はできたが、誰何の材料はそれだけだ。座っている男の容貌はほとんど、高く積まれた衣服に隠れてしまっているから、こちらから挨拶を述べはしたが、具体的な物言いはそれ以上何もできないでいる。) 2009/07/26 (日) 22:49 ◆ ダンテ :(ぶすりとやった傷は、思ったより深かったらしい。痛かったのは確かだが、血が膨れて滲むほどとは思って居なかった。糸を通して、ボタンの周囲に潜らせる作業を中断し、人差し指に視線をやる。)………、ん、(小さく舌を出して舐めつつ、簡単な止血作業の真っ最中だった。少量といえど、あらいたての衣服に血をつけてしまう気には流石になれない。足音というよりは、他の、揺れる葉などの環境音で顔を上げ、止血を中断する。それほど長く、咥えている必要もないだろうと判断して、)はい。こんばんは。(落ち着いた声で、少年の声の方へと挨拶を返す。)おかえりなさい…、おやすみかしら、(どこか無機質な、彼の声はある意味で特徴的だ。名前は呼ばないまま、理解はしている。) 2009/07/26 (日) 22:57 ◆ ゾンド :(無事に返答が帰って来て、それらの声の質で知れた要素は多い。知っている声色であることと、それと同時に同僚であることが、最も重要なことだった。空中庭園から出るために少しばかり前に進み、衣服の小山を迂回して回り込んだ。ダンテの座る目の前まで来て、その椅子から一歩半も距離もない位置に茫洋に立つ。)帰ってきたけれど、まだ、眠りは……。(視力であって視力でない、高いようで低い、無意味に精度のあやふやな感覚器官であるはずのそれ、真っ暗な瞳孔が、不必要に拡大した。)…………血……が……出ている、けれど。(赤黒い滲みを無言で凝視している。二分も経ってから、ふと思い出したように、あらいものの山に向かった。似たような積載物を何枚も捲り上げて、見覚えのある自分用の布巾を見付け出す。)………これ………使って下さい。(無駄に丁寧に、両手で摘み取るように、白い布巾を繰り出した。10センチ四方の、せいぜいハンカチやそういった用途のものだが、生地の肌理はそれなりに細かい。) 2009/07/26 (日) 23:12 ◆ ダンテ :…ええ。出てるわね。(目の前に立った少年は、何てことはなく思ったとおりの人物だった。指摘されて、気にも留めずに作業を再開しようとしていた人は、短く答えてふっと小さい溜息のように笑っていたけれど、その人が衣服の山を漁る行動に出るとは予想外のことで、)いえ、気になさらないで。舐めていたら治るものよ。(針で指を刺したくらいで、人様の布巾を汚してしまいたくない。それに、高価な代物に見えて、なおさら。首を左右に振って、ありがとうございます、と断りを入れ、)酷い、雨ですのに……今までお仕事を?(部隊訓練を覗けば、専ら引き篭もって非戦闘員の真似事――もとい、さぼっている男だった。どこか他人ごとで、大変ですわね、とぼやきながらボタンに視線が行くのはすぐあとのこと。宙ぶらりんになっていた針を手に、糸をボタンと布の間に巻いていく。取り付けてすぐに取れるようでは、本職の者が責められそうで悪いので、しつこいほど周囲に糸を回す。) 2009/07/26 (日) 23:22 ◆ ゾンド :………ごめんなさい。まだ、あなたの負傷の度合いが、わからなかったから。(本人の口からはっきり断られて、行き場を失った付近が宙ぶらりんに漂流していた。第二の説得手段を探しているうちに、彼はすぐさま作業を再開させてしまっていて、諦めたように浮漂させていた手を降ろす。彼が心中、布巾に下した評価は当たらずとも遠からずだ。高価というか、値の張るものを市場の二倍三倍の値段で売り付けられるような、そんな買い物ばかりを、稀に繰り出る街中ではいつもしている。腰を落ち着けられる道具を探しに数歩、場を後にして、数秒も経たないうちに近場の椅子を持って来て、座った。)雨でも構わない。むしろ、雨の状況が多い様な気はするが、統計は取っていない。……落雷が酷いので、外での訓練は大半が中止されているようだけれど。今までいたのは、鉱山だったから。(繕い物の知識に貧困な子供は、ダンテの手作業をぼうっと見ているだけだった。細かい作業がそれほど器用な方でもない。彼の施術が上手なのか下手なのかもわからないが、丁寧で丹念であることだけはどうにか窺い知れる。) 2009/07/26 (日) 23:35 ◆ ダンテ :…ふふ、謝るようなことではないわ。優しいのね、ゾンドさん。(なぜか子供の多い隊ではあるが、そのおかげで、子供の扱いにも少しは慣れたと思っている。まったく微々たる慣れではあるが。その頭を撫でる、という所作を、行いたいと思える程度には。ただ、両手が塞がっていて、実行出来たのは言葉を口にするだけだった。)鉱山、そう。何か、掘ったりしているのかしら…、毎日、泥だらけの服を洗うのよ。雨も大概にして欲しいわよね。(会話の種というよりかは、後半は自身の愚痴になってしまっていた。汚すのは楽だが、洗って綺麗にするのは骨が折れるのだ。愚痴を言いたくもなる。口を動かしつつも、手はとまることなくボタンを取り付けて、結んだ糸を隠して終わる。終わった衣服は左隣に積んでから、右に置いた軍服を持ち上げる。小さくも大きくもないそれの腹部が、破れているのだった。) 2009/07/26 (日) 23:47 ◆ ゾンド :………どうなのだろう。自己の評価は自身からは下せないのだから、そういった、他者からの判断は、有力な材料として考えていいのだろうか。………個人的な感覚としては、あまり実感がないのだが。(社交辞令という処世術にも、身近な人間に対しては大層疎いようだった。これが全くの他人であれば、年上やら目上の人間として、誉れの言葉には丁寧な返事の一つや二つを返して終わった筈が、今に限っては正直な感覚を無意味に長々滔々と述べてしまう。その間にも、ダンテによる衣服の修繕作業は続いていて、次は軍服の番だった。)最近になって、鉱山での発掘作業が再開されると決定されたらしい。いや、もう再開されているのかもしれないが、ともかく、近い将来からは、より作業量が増える可能性も十分以上にある、と、思う。……鉱山夫の衣服が、こちらに流れて来ることは、現実的にはあまりないだろうけれど。(愚痴の内容にトドメを刺してしまいかねない情報をダンテへ無節操に伝えて、腹に穴の空いた軍服を眺めた。これを破いた本人は、大丈夫なのだろうか。怪我が無ければいいとは思ったが。) 2009/07/27 (月) 00:00 ◆ ダンテ : 他人って、思ったより見ているものよ。…見てないことも多いけれど。……そんなに深く考える必要は、無いんじゃなくて。あなた、良い子よ。(僅かながら首を傾げているのは、目の前の少年の言動が理解出来ないわけではなくて、単に問いかけの所作だった。)………そうですか。(言葉の間に取った間は、十分に深刻なダメージを受けているとも取れるだろう。実際、量が増えたところで最初から骨の折れる仕事なのだ。今更嘆いても仕方が無い。)そう、なら、いいですけれど。皆色々着ているから、鉱夫も軍人も、分からなくって。……ん、(言葉を切って、破けた衣服を見下ろす瞳は一瞬色が無い。感情の排された物体の瞳は、特に憂いも抱かずに傷跡を一度なぞって、糸を多めに取った針を摘む。誰のものかは知らないが、仕事は縫い付けるだけの、矢張り至って簡単な作業だ。男だから、と簡単なものだけ回してくれたのだろうか。) 2009/07/27 (月) 00:13 ◆ ゾンド :ありがとう、ございます。……だけれど、本人の性向は、物質的に即する純粋な利益には、繋がり難いのでは。優れて何らかの業務がこなせるような、飛び抜けた取り柄があれば、より好ましいのだけれど。(褒められたのだと受け取って、一応、とりあえずの礼は述べてから、発言の趣旨は移った。深く考えるなという意味を、根本的に誤解しているのかもしれない。)……………。(長い沈黙という間を空けたあとの、了解のような相槌には、敢えて何も返さなかった。返す言葉というか、励ます材料に手持ちが無かったせいだが。)軍服はまだ、そうでもないけれど、鉱山夫の服は、少なくとも最外部に着る作業着は、とても強い生地から造られている。こちらにあるような、やや薄手のものは、肌着か、もしくはそれらに近い用途の素材のように思えるが。(そういった理由もあってか、やはり鉱山夫用の業務衣は、専門の仕事場で繕われるか、そうでないやや弱めの生地のものは、ダンテのような男手に頼むのだろうか。いま彼が繕っている軍服だって、やはり女性の握力で何枚も続けて縫うのは重労働に違いない。簡単でもあって、それは二重の理由から適材適所なのだろう。) 2009/07/27 (月) 00:31 ◆ ダンテ :そう。利益を求めるのね。(受け取り方を少し違えて、意外そうに瞳を瞬かせる。は、と息を吐いて、がたがたと窓の硝子を揺らす風にし視線をやる。洗濯物が乾き易いとも、飛ばされてつかいものにならないとも言われた、やっかいな天気だ。)…………あなた、命令に従う?(ふと思考の間をとって、再び首を傾げて少年の瞳を見る。)なるほどねぇ…見てきたひとの言葉は説得力あるわねぇ。(関心したように間延びした調子の声で頷いて、それならば、待機に――というよりは、己の方に寄越されている衣服は主に軍人のものなのだろう。どちらであろうと仕事はするのだが。やりたいことしかしないのは困りものだが、給料だけの仕事は行うつもりで、布に針を通してちまちまと縫いとめていく。んん、と途中で咳を喉で止めつつ、) 2009/07/27 (月) 00:46 ◆ ゾンド :状況にもよるけれど。自であれ他であれ、将来により大きな収穫が期待できそうな場合は、マイナスも甘受できる。自身が利益を希求するというより、自分を含んでいる共同体へ利益を提供したいという言葉が、より正確か。(不意にやってきた強風に雷雲が吹き散らされたか、確かに月が出る様にはなったが、悪天候には変わりが無かった。竜騎士の飛行訓練には絶好のそれとはいえ、日常生活の便には不利な烈風は、甚だ迷惑であるらしいという事は知識の上では知っている。色合いは似ているが、自分とはどこかが決定的な違いを持つ瞳を正面から胡乱に見返して、)従うけれど。下部にも理由を知らされて、納得できるものであれば、理想と言える。(唐突に差し向けられた曖昧な問いだったが、一瞬だけ言葉を選ぶような間を作って、無難ながら本心を述べた。続けられる繕い物の、針先を見るように視線を落とす。ダンテのそれはしなやかな指先だが、手捌きはやはり男性的で、無骨に見える。ただこの作業に慣れてないだけだろうと思うけれど。飲み物が気道に入りかけたような、彼の詰まった息にも見逃さず聴覚を欹てたけれど、具体的にそれへどうこう指摘はしなかった。異常を露見させれば、その限りではない。) 2009/07/27 (月) 01:01 ◆ ダンテ :(今度ばかりは理解に難い。首をかくりと傾げてしまうほど幼い感性は生まれた時から失われていたが、布に向けられていた瞳が動きを止めるくらいには、少年の言葉は人間離れしている。確かに人間では無い、のだろうけれど。)そうね。他を救う為に自を殺しても構わない、なんて言い方したら、ちょっと破滅的ですけれど。――従うのね。命令に従順な子供はそれだけで取り得なのよ、(ともあれ、己の居たところではそう言われた。最早、古い記憶だ。忘れた方がいい、楽しくもない思い出ばかりで。)……は、ぁ。肩、凝るのよね、ずっとこれしてたら……ちょっと、休もうと思うけれど…あなた、何か飲む?(何をするでもなく座って手元を見詰めている少年を放っておくのは気が引けて、とは言え菓子を勧めていいものかも迷っていた。子供は菓子が好きだというのはただの固定概念でしかないのだから。) 2009/07/27 (月) 01:14 ◆ ゾンド :そういった、一定以上の犠牲を前提とした作戦は、古来から議論を呼ぶ格好の種であるらしい。あくまで書物から得た知識ではあるけど。情と理か、はたまた差し迫った現実に対してどこまで理想と信念を組み込めるかは、人間の動く動機が曖昧な以上、決定的な結論が出るにはまだ時間が必要だろうと考えている。(それに対して自分がどうであるか、そういった具体論を全く含まない相槌を淡々と言う。自分の身に降りかかった災いでない限りは、こうやってどこまでも他人事のように言えるのだ。実際にダンテの言うような命令を下されればどうなるかは、未だ思考の外にある。考える余地も残していないと言えるが、そこら辺の暢気さだけが、やっと子供らしいと言える部分なのかもしれない。)おつかれさま。肩が凝っているのなら、そこで休んでいて欲しい。自分で揉み解させるのは気が引けるけれど、飲み物は我々が用意するから、待っていて。(言い終るや否や、拒否の暇も与えずに席を立った。給湯室にはそこそこの距離があるが、何がいい?と中途で小声を追加した。そこまで到達する前に何を飲もうか聞いておく。) 2009/07/27 (月) 01:31 ◆ ダンテ :…ひと。難しい生き物ね。議論なんて、時間の無駄だと思いますけれど…悩むのがひとの証なのかもしれないわ。(そう口にしても、実際その事態に直面したとして、己はきっと迷わないだろう。死ねと命じられれば死ぬし、殺せと命じられれば目の前の同僚さえ手に掛けるだろう。神の名にかけて、――ただ、そんな命令は下らないと勝手に思って安心している。思ったよりも己は人間なのかもしれない。じっと少年の瞳に魅入って、)……でも、悪いわ、(断りを入れる言葉は弱いものだ。この少年が、どんな茶を入れるのか興味はある。)…悪いわね。ラベンダーの、お茶があればいいのだけれど。ごめんなさいね、(席を立つ背に、本当に申し訳なく思いながらも声を投げて見送り、仕事に戻る。手はどうあっても休めないらしい。) 2009/07/27 (月) 01:47 ◆ ゾンド :同意したい。人体の構造は難しく出来上がっている。……平静なうちにそうした論を積み上げるのだけなら、無害な分だけ戦時よりましなのだろうし。(どこか食い違った返事を背中越しに答える。男の思考を読む能力など勿論の如く持ち合わせていないが、軍人という身分に納得している人間ということならば、彼の出す結論は確信していた。互いに迷いはしない筈だが、下される命令に合理的な理由を求めるか否かぐらいしか、二人の意思に違いはないのだろうと、思う。)……ラベンダー……、茶筒に、説明書きがあればいいけれど……。(あんまりに安い葉であれば、そうした酌量措置も許されはしない。だが、そこまで状況は無慈悲ではなかったようで、所々掻き傷がまぶされていはいるけれど、意外に親切な実物を戸棚の上部に見つけることができた。)……まず、…ポットに、容れるのだったか。お湯は、すぐに沸くと思うから、少しだけ待ってて。(こちらの仕事に限っては、適材適所ではなかったようである。少年の漏らした言葉はお茶に不慣れだという事実を惜しげもなく曝していた。カップを軽く水洗いする手際だけは本物だったが。) 2009/07/27 (月) 02:01 ◆ ダンテ :人体、だけなら、医学書でも軽くは、理解できるでしょうけれどね。…そうは、いかないのよね、人間って。(成り立たないようなちぐはぐな返答さえ、咎めることはせずに微笑したまま頷いて、精神面は難しい、とただ言葉にしないまま納得していた。)……別に、拘らないわよ。あんまりにひどい、淹れ方でさえなければ…、(矢張り己がやっていた方が良かったかと思いつつ、腰を上げて縫い終えた軍服を脇に追いやる。給湯室を覗くように視線を彷徨わせながら、待っててと言われたら、迷わず駆けつけていくわけにもいかず立ち往生のまま、)………、たまには、いいかもしれないわ。(独り言を呟いた。気が付けば子供の世話を焼いていることの多い人は、気持ち新鮮で、その背を見守るように眺め、新しい白い洗い物を抱き寄せた。あとは丁寧に畳んで籠に放りこむだけだから、それこそ休憩に専念できるだろうとほっと息をつきつつ、席に再度落ち着いた。) 2009/07/27 (月) 02:14 ◆ ゾンド :工程は覚えているし、実際に動作を見学してもいる。同僚の淹れ方をトレースするだけだから、そこまで大きなの瑕疵は………実際、僅かな間違いでも、味には差が出るもの?(一人分のカップを洗い終えて、真新しい洗いたての布巾で拭いた後に、言い訳か、もしくは慰撫のような発言をした。お茶の経験には、それを味わったことすら極めて疎い少年は、まるで異国の料理について尋ねるような口振りで無碍な事を訊くのだ。ダンテの視線には、気付かなかった。独り言にも、敢えて何も返事を言わなかった。)……お茶とは、そこまで効率よく疲れが取れるものなの?待機のひとびとは、よく好んで飲んでいるようだけれど。水分補給にそこまでの効果があるようには、実感としてもあまり感じられなかった。(これからそれを飲む相手に対しては失礼千万な質問には違いないだろう事だけれど、それでもあくまで真摯に、純粋な質問として尋ねていて。茶葉をポットに入れる前に、沸き立ったお湯をだけをまず注ぐ。ポットを十分に温めたあと、湯は捨てて、ラベンダーの絵が書かれた缶から葉を掬い出し、ポットに投入する。あとは湯を注いで、盆に載せ運ぶだけだ。足取りは慎重だが、室内ともあって道中に障害物はない。)でき、ました。(まずはカップを卓に置き、ややぎこちないが確実な手付きで茶を注ぐ。分量の見極めが難しかったか、やや濃い口かもしれない。) 2009/07/27 (月) 02:30 ◆ ダンテ :変わらないんじゃない。少なくとも、一般人にはわからないと思うわ。(茶の味を見極めることが職業のもののことは知らない。ともあれ、自身の舌ぐらいは一般的だと思っては居る。大丈夫よ、と慰めのように声をかけつつ、衣服を畳んでいく。)…たくさん、知って居るわけではありませんけれど……、お茶は、薬湯なのよ。ラベンダーは、不眠に効くの。カモミールも、そうだった筈ですけれど……、(そこでラベンダーを申し出たのは、ただ単にカモミールの匂いが好みではないからだった。水分補給の為もありますけれど、と微かに笑って答えつつ、椅子の下に隠し置いていた籠を手前に出してきて)……ん。ありがとう…よく、できたわね。(衣服を一抱え放り込んだ。) 2009/07/27 (月) 02:43 ◆ ゾンド :(生育そのものに害するもの利するものでないなら、人体へ善い方に作用する薬という世界のことは、そう多くは知らなかった。医学書には決して書いていない薬湯とは、さしづめ一般家庭の日常的な医療行為に属するのだろうか。)そういった効用が?……知らなかった。単なる、自然発生した嗜好品というだけのものかと、考えていたけれど、認識を改めたい。(骨盤の前に緩く下げられた手に、盆の端を両手で掴んだ姿勢で、有意義な講義を立ち聞いていた。彼は曖昧を自負したつもりのようだが、薬用効能があるという世界を知っただけでも、十分以上の収穫なのだ。)ラベンダーの缶にようだったから、その葉を入れたのだけど、違っていたら、ごめんなさい。あなたのノルマも、これでおわり?(湯気とともに、宙に甘く広がる香りで分かると思うが、種類は間違いなくそれである。砂糖もミルクも何もないシンプルなものだ。高価な砂糖を使うという選択肢は考慮に無かったし、レモンもまた同じ理由である。この気温湿度で一日経ったミルクも、高価とは別の理由で不適当だろう。) 2009/07/27 (月) 02:55 ◆ ダンテ :(お茶を飲むくらいでこの不眠体質が治ったら何も困りはしないのだ。気分だけは改善されるから、全く意味がないとは言えないだろう。ただ、完全治療には至っていないのが現状だった。それでも折角認識を改めることとなった少年を真っ向から斬るような野暮な真似には出ずに、ええ、と深く頷く。)大丈夫。葉でも、花でも淹れられるから…ん、良い香り。(確かにラベンダーだ。眠る直前には、勝手に淹れて勝手に飲んでいることが多いから、そろそろ切れていないかと心配していたけれど、補充してくれるものが居るらしい。ありがたいことだ。カップに注いで、持ち上げると冷めないうちに口に運んで、一息。)…ええ。ごめんなさいね、付き合わせてしまって……。一緒に寝ても良いけれど、まだこれ、持っていかないといけないから。どうか、先にお休みになって。(さらっと危ない発言を何てことのない顔で口にして、籠のものを指差した。眠らない少年らしいが、少なくとも休む時間くらいはとって欲しいと思っている。) 2009/07/27 (月) 03:09 ◆ ゾンド :いえ、片手間のことだから。こちらこそ、仕事の集中を妨げて、ごめんなさい。(軽く、首を縦に降ろすくらいの謝罪をした。手持ち無沙汰な盆の行方をどうするか暫し考えたけれど、それも卓の上に置いてしまう。)一緒に、寝てくれるの?同室のひとに許可を出してからなら、となると、後々になってしまうけれど、それはまた、後日にお願いしたい。(隠語にも、外見年齢相応に理解が及ばなかった。それ以前に、異性であろうと同性だろうと、つがいとは無縁な種族であることも、無関心を続ける一因だ。)あと片付けは任せてしまうけれど、それでは、お言葉に甘えさせて貰いたい。……おやすみなさい。(盆もカップも放置して行くのは後ろ髪を引かれてしまうけれど、ポットのお茶がまだ入っていることを思えば、彼がまたおかわりを注ぐ可能性も踏まえなければならない。深く腰を折るような会釈のあと、ランプの灯りも届かないような闇の中へ消えて行った。扉が閉まる乾いた音が、後にはひとつだけ残される。) 2009/07/27 (月) 03:32 ゾンド【退室】 (2009/07/27 (月) 03:32) ◆ ダンテ :妨げにはならなくってよ、大丈夫。…ありがとうございました、(緩く笑ったまま、そちらが縦に首を振るなら此方は横に。)…………寝るなら、此方の部屋でお願いしたいところだけれど。(相談はやめてほしい。駄目よ、それは、と小声で言いつつも伝わっているのかは謎だ。この男の日頃の行いの悪さが原因なのだろうが、同僚へ持ちかける言葉は大抵、文字通りの意味しか為してはいないのだ。地味にけじめはつけているのである。ただ、求められたらきっと拒まない。それが情愛と誘惑の僕。)はい、お任せを。……キス・キルリラ、愛多からんことを。おやすみなさいませ。(去っていく背にひらと手を振って、暫くぼんやりと見送った後に飲みかけのラベンダーで喉を潤す。――眠く、なってきたかもしれない。いくら不眠体質といえど、限界はあるのだと思い知りつつ、襲ってきた刺す様な頭痛に眩暈がして、ゆっくりもしていられないと溜息を吐いた。祭服の帯を調えてから、カップをテーブルに置いて籠を抱く。いたずらをされる前に、所定の位置に戻してくるとしよう。ティーセットを片付けるのは、そのすぐ後。) 2009/07/27 (月) 03:47 ダンテ【退室】 (2009/07/27 (月) 03:47) HIGHLAND FORTRESS 峠の要塞(閉鎖しました) http://h-f.sakura.ne.jp/kariken/index.html BACTERISM MATRIX http://bacterism.matrix.jp/ PCキャラページ http://tryx-quad.sakura.ne.jp/zond.html