題名:指実験 登場隊員:セレス・ゾンド(オル・ベッテ要塞) セレス【入室】 (2009/10/09 (金) 23:01) ◆ セレス :(吹いてくる風はエンデュミリオンと比べるまでもなく生温い。水と土と、虫を遠ざける為の草の臭いとが混ざった他では味わえない空気も、他では覚えがない。息苦しいような心地さえする。―――けれど木々のない空き地から見上げた空は雲ひとつなく、綺麗で。身を削り始めても月は大きく見え、獲物を狙う獣の瞳のように爛々と金色の光を放っていた。)・・・・・・(滞在の日を重ねても仕事は終わらない。到着した物資の確認を一応、と兵站の者に呼ばれた帰り、そのままふらりと道を外れて、言うなれば涼みに。) 2009/10/09 (金) 23:08 ◆ セレス :(柵の向こうに見える森を眺めて目を細める。薄着の上に羽織った黒いローブの裾が、歩みを止めているのにたゆたうのは、男の魔力が周囲に薄く滲み出ているからだ。その所為なのか、虫の音は途絶えていた。――どこもかしこも、思い出というには少々酷い昔の記憶によく似ている。出撃命令がないのが奇妙なぐらいだ。兵士としての初体験の殆どは此処で済ませ、生きてきた。今とは違う仲間がいたのも此処で、彼らが死んだのも、まだ生きているのも此処だ。戦場といえば此処、と自分の記憶にある場所で、戦うこともなく、その予定もなくいるのはとても不思議だった。) 2009/10/09 (金) 23:22 ゾンド【入室】 (2009/10/09 (金) 23:23) ◆ ゾンド :(それは瘴気と言えるほど醜悪でもないけれど。あくまで一般的で普通の精神を持つ者なら、むしろ要塞のあちこちで展開する名ばかりの医務室の方が、よっぽど吐き気を催すのだろうが、向こうの広場も大まかに言うとなるとなかなかのものだった。それの身長にほぼ匹敵しているという大袈裟な全長のスコップを、自分の体の前で斜めに担いでいる少年兵が、重量のバランスの悪そうな割にはまともな足取りで仕事の帰途を進んでいる。まだ生温い土と泥を靴だの裾だの袖だのにこびりつかせているが、むしろ真っ黒なコートに付着した白い塵灰の方が汚れとしては目立っている。一目を忍んで進む道程は律儀に柵に沿っており、時折泥濘に足を取られるくらいには前方不注意だった。) 2009/10/09 (金) 23:29 ◆ セレス :(どんな仕事をしたのだったか。内容は大まかには覚えているのだが、何故だか思い出すとき鮮明なのは、その仕事自体ではなく、要塞に帰ってきた後の出来事ばかり。くだらないことばかりよく覚えている。森の中で死んだのは、何人いただろう。数え切れぬほどいたのは確かだけれど。)・・・なあ、(乱雑に、纏りなく考えながら口を開いて、半ば無意識に呼びかけた。続く言葉はなく、森からの返事も当然なく、代わりに魔力が凪いだので虫が鳴き声を再開した。魔力を引っ込めた魔術師は溜息を吐いて、ふいと視線を森から外す。明るい月の下に背の低い姿が見え、また動きを止めた。) 2009/10/09 (金) 23:44 ◆ ゾンド :(誰かが気のない声を出した後にも、大荷物の人足見習いは少しの動きのぶれも無かったけれども。こうして外で感慨深い空気に浸っているひとは珍しいから、何か味気無い敬礼や忠告の一つでも告げようと、やたら身奇麗な人間に向けて腰の舵を切った、けれども。さくさくと軟らかい地面を踏み締めてその男性の前に来たはいいものの、大股一歩前ぐらいに棒立ちでいるヒトをまじまじと眺めて、そのまま30秒くらいは顔を上げたまま硬直、ぎゅっとスコップの木柄を握り締めたまま、名状し難い表情を作る。眉間に皺を寄せる、とまでは行かなかったようだが、それでも若干ながら、二つの細い眉が丘陵の稜線くらいにはハの字を作った、かもしれない。)…………あなた、手をだして。利き手でなくてもかまわないから。(最初の最初に放った言葉が、脈絡もなくそんなものだった。) 2009/10/09 (金) 23:55 ◆ セレス :(ぼんやりしているものと言えば傷痍兵ぐらいの要塞でこうしているのが異質だという自覚はあるのに、考えに沈むと他人からの視線に疎くなる。誰かの不興を買う前には撤収するつもりだったのだが、どうやらその前に見つかってしまったようで――相手が身内だと知れれば、立場を誤魔化す作り笑いをする前に自然と表情は出来上がっていた。)ああ、お疲れ様・・・久しぶりか。どうだ、こっちの仕事、は(実にいつもどおり笑顔で話しかけて、そこまで言ったところで彼の表情がいつもどおりでないのに気づいた。すぐに叱責がくるかと思いきや、)ん?うん?(違った。少しばかり困惑しつつ、言われたとおりに右手を差し出す。) 2009/10/10 (土) 00:08 ◆ ゾンド :(彼から発した他愛も無い世間話のような軽い挨拶も、こちらは返事を含めた何もかもをさっくりと省略している。差し伸べられた手を暫し眇めてから、唇を薄く開いて噛み付いた。と言うよりは、親指と小指を除いた三指の第一間接くらいまでを口に含むような動きを見せた。それらの動作も全ては、奇天烈な動きに怯えられて、細っこい顎の急な接近から遁走されなければの話だが。とはいえこちらの噛み付きも顎の力は極めて緩く、成功したところでせいぜいクリップに指を挟まれたくらいの圧迫感しか感じない筈だ。甘噛みと言うのもおこがましい程の。) 2009/10/10 (土) 00:15 ◆ セレス :(唐突な申し出だったのと久しぶりだったのと、その他理由は諸々あったが、大分鈍かった。およそ日常的とは言い難い状況に反応といえる反応をできたのは、噛まれてから。)・・・・ぞ―――っこら!(名前を呼ぼうとしたのはその手前だったが、指先に触れた感覚があったので中断された。ぎょっとして目を見開き慌てて手を引っ込める。触れたところを確認しながら、叱る声を飛ばした後によく動くのは口だ。)何、して・・・何も付いていないとは限らないんだぞ!説明を受けなかったのか!(下手に泥でも付いていたら死ぬかもしれない、などと。自分は要塞から出てきて特に何にも触れていないので、これしきでうがいをして来いだの医務室に行けだの言うほど神経質ではなかったが。)なんでも口に入れるんじゃない、――いや、貴方は大丈夫・・・なのか?(途中で、ゾンドが異種でそんなもの物ともしない可能性があると気づいて、顔の向きを戻して首を傾げた。なんにしても行為の意味など後回しらしい。) 2009/10/10 (土) 00:31 ◆ ゾンド :あれ………?……指紋は……本物みたいだけれど……?でも、どうしてここにセレス本人が……。(咥内に指を含めていられたのは本当に一瞬だけの時間であって、当然の帰結だが、不運な被害者からは至極真っ当な忠告を拝領したのだった。けれどもこちらといえば、不衛生な行為への叱責すらどこ吹く風の様子で、別の疑念を解くことに意識が手一杯だ。少年兵側にとっては、あくまで行為の齎す調査結果に拘泥している。明後日の方角に首を傾げているけれども、思考に材料がまるで足りていない現状では、かれがここに存在する事実の自然な説明に行きつかないでいた。余談であるが、唾液のようなものどころか、微かな液体すらセレスの指には付着してはいなかった。)それは別個の案件としたい。けれど……どうしてこの要塞に?班の編成に変更があったとは聞いていないし……。まさか任務が終了した訳でも、中断したわけでもないでしょう?(自分についての追求はばっさりと切り捨てたが、それよりも、語尾が上がりっ放しの言葉尻に困惑がありありと浮かんでいる。) 2009/10/10 (土) 00:43 ◆ セレス :(最近、ことあるごとに指先を確認する破目になっている。二回とも何もないのでまだ良いのだが――ともかく、泥や花粉や、得体の知れない物が付いていないのを確かめて肩から力を抜いた。)・・・ゾンド、大丈夫なんだな。そういうことにするぞ。(この感じだと大丈夫なのだろうが、言葉はそれでも、断定に近い問いかけを繰り返す。まったく、と腰に手をあてて)こっちはまだ始まっていない。・・・臨時の任務で、短期で派遣されてきた。今はディアヴォルと、アルツールと共に行動している。任務が終わり次第、戻るつもりだ。(質問を繰り返している所為か幾分子供らしく見えた人に、簡潔な説明を。通常であればそれまで居た場所からの移動についても追及があるような短いそれだが、ゾンドが大招門の存在さえ忘れていなければ、省いた所でなんら無理のある話ではない。)ついでに貴方たちの様子を見て来い、と隊長からお達しだ。 2009/10/10 (土) 00:57 ◆ ゾンド :知っているうちには、この辺にはあまり。それほど活発な子は、少ないみたいだから。お腹の子達に比べたら、聞き分けがいい方に含められる。(彼の心配から来ているぶん、こちらが明らかな動揺を見せるほどの叱責ではなかったけれど、すごすごと肩を小さくして恭順に頷いた。細く薄い息を吐きながらの口調にも反省が含まれていると受け取って貰えれば幸いだが、少年の述べる言葉の内容はいつでも不透明である。)そう……。頷ける説明に聞こえる。それは、我々は内容を聞くべきではない任務?できうる範囲で、便宜は図りたいと思うが。(特に隠密行動の任務でもなさそうであるし、かれの言葉に嘘はないだろうことは知っている。西班ばかりで組まれたチームに何か意図はあるのだろうか、などと内心で余計な疑問を浮かべたが、それよりも他に控えている言葉を率直に紡いで)こちらのメンバーには、把握している情報の上では、まだ負傷者はゼロ。けれど、ナコトのゴーレム隊のうち一体が作戦続行不可能。目立った被害はそれくらい。……現地でまた、新規に任務を仰せ付かったけれど、これは既に完遂できている。全体としての進捗は、……遅いのかも。(これらは、彼が何日前からここに居るのかは知れないから既に周知の情報かも知れないが、説明したのは様子というか、現在の状況だろうか。最後に、任務本来の目標物はまだ手掛かりすら無しだという事を言外に述べた。) 2009/10/10 (土) 01:13 ◆ セレス :うん、それならいい。(自分で応答を促した割に、聞こえた内容がよく分からなかったので返せた言葉はそれきりだ。安堵らしい表情は浮かんだけれど、頷いて俯くようになったゾンドには声の調子でしか伝わらないだろう。)・・・・・・アルツールが、シリウス様に届け物があるとのことで・・・私たちが護衛として編成された。上層に面会申請してあるから、もう終わるよ。(彼の察したとおり秘匿の任務では無いので、言葉は問題なく紡がれた。終わる、との言葉には、いくらか希望も含まれていた。いくら補給が真っ当に行われている要塞と言えど、戦力にならないのに前線に長く滞在するのは気が引ける。東にいる同僚たちの顔を見ておきたいという気持ちも勿論あるが、別れるときにまた心配ばかり出てきそうで、実行に移すかは微妙な所だ。)そうか。負傷なし、はいいな。戦況は悪くはないらしいし・・・ああそうだ――(ゴーレム隊、と聞いて初めて、アルケミストの連れが増えたのだと知った。隊員としての追加ではないのは間違いないが、その辺りどうなってるのだか・・・そんな問いかけよりも優先度の高い事項を思い出し、傷も汚れもなかった手で懐から軍規手帳を出して見せる。どの頁、記述、と言うことはなく、ただ物を示しただけだ。)折角あるのだから、時々は使え、と。これも隊長から。他の隊員にも言っておけ。・・・・何も連絡がないというのは良い知らせにもとれるがな。(笑いながら、定期報告、と。) 2009/10/10 (土) 01:31 ◆ ゾンド :シリウスさまに?……それは、実のところ難しい条件では……。あの方は連絡もなしに一人で密林に分け入ってしまうし、出て行ったまま一日以上戻らないこともある。上司という手前……あまり、強く咎めることもできないから、できれば、よく言い含んで欲しいのだけれど。(無事に終わるどころか、運が悪ければ今日の朝にでもアルツールともども荼毘に伏していてもおかしくないような不逞の上司であった。面会の申請くらいで捕まればいいのだが。実際感覚、要塞内で待ちぼうけしているよりも、森で巡回しているうちに遭遇を期待する方が効率が良い気さえしてくるのである。そうして、彼の懐から提示された一冊の手帳を眼に映すまで、それの存在をすっかり忘却していた事にようやく気が付いた。一度は真ん丸く開いた瞳を伏せて、ぐしぐしと服の袖でおでこを拭う。)………すっかり、失念していた。申し訳ない。定時連絡という業務もあったのだった。…口頭では、捕まらないことも多いから、こちらで回している回覧誌に記載することで、他の子達には伝えておくことを約束する。 2009/10/10 (土) 01:42 ◆ セレス :(ゾンドがつらつらと平淡に、今すぐに終わると言ったばかりの任務の難点を並べていく。その点についてはこの男としても考慮の内ではあったが、実際にそういう場面に遭遇したのだろう少年の話を聞くと、流石に・・・表情が曇った。)なんだ、そんなに、酷いのか・・・・・・私だってただの隊員だからなぁ、あんまり口うるさく言える立場では・・・どうしたら要塞に留まっていただけるかな、(溜息。肩を落として要塞の建物を振り返る。森にいるのだと言われても――自分とディーだけで行くならともかく、アルツールを連れて森に分け入るなど、もう想像するだけで面倒臭い。敵どころか自然にさえ最大限で気を配らなければいけない場所での護衛など、精神を削りに行くようなものだ。)・・・・貴方が忘れているなら、皆忘れているなぁ。・・・頼んだ。(ゾンドが手帳を視界に収めたと分かればすぐにそれを懐に戻し、諸々の想像を打ち消して弱く笑う。連絡について確約されたことに頷いて、念押しの一言。彼の肩を軽く叩こうと手を持ち上げる。) 2009/10/10 (土) 01:58 ◆ ゾンド :酷いと言うのもおかしいけれど、彼がまだ生きているのが不思議なくらいではある。…これは強硬手段だけれど、下半身を不随にしてしまえば、外には出られないと、思う。(感想だって身も蓋も無かったし、ふと考え付いた対応策は酷薄かつ既に謀反のレベルであった。)頼まれました。要塞に戻る?我々も、夜が明けるまでにまだ、埋めなければいけないものが控えているから。(応じる言葉だけは素早く、こなしていない重要な仕事を見付けたときの心境というのは、盲点だったパズルのピースを確定的に接合できると確信した時と似ている。こちらも釣られるように要塞の方角を向いたが、少年の視線の先には恐らく会議室があったのだ。セレスが手を上げたのに反応して、その掌の先を目線だけで追ったが、特に身を捻ろうとも逃げる素振りも無い。物理的にスコップが邪魔になっているくらいだが、それを態々降ろそうとまではしなかった。) 2009/10/10 (土) 02:09 ◆ セレス :・・・ゾンド、(肩を叩いた手をそのまま横に、外側ではなく内側、詰る所ゾンドの頬へとずらした。逃げられない限りはそこに添えて、酷なことを言った無表情な顔をこちらに向けようとする。見た目と裏腹な発言はもう慣れているから驚いたりしないが、今回は流石に内容がよろしくなかった。誰か兵士が通りすがったら、何の企てと勘繰られてもおかしくはない。)実行しようと思っているかどうか、は別にしても、そういうことは言うものではない。・・・・効果は間違いないだろうが、望んでいるのはそんなことではないしな。分かったか、(声音はそう厳しくはならないまま、むしろ、逆に穏やかなぐらいだった。ただし灰色の目はじっと、彼の黒い目に注がれている。言い終えれば彼が返事をするより先に手を離して、うん、と遅く頷いた。帰還についての応答だ。)ディアヴォルにだけ任せてはおけない。・・・もう寝たかな。物資についての確認もあるし、私は中に戻るよ。(今聞いたようなことも相談する必要があるかもしれない。生きているのが不思議なぐらいとは、普通に考えれば大事だろう。) 2009/10/10 (土) 02:26 ◆ ゾンド :………了解した。これでは本末が転倒していた。以後は、気をつけたい。(むしろ此方から頬を掌に収めるような、首の傾け方をした。真摯に向き合った瞳を先に逸らしたのは、どちらだったか分からない。ゆりゅると離れてゆく手によって空いた肩にスコップを載せて)我々はもう少しほど、野外で活動している。それも、スコールが降るまではだけれど……。何か用事があれば、いつでも呼んで。(行き先は互いに違うみたいだけれど、とりあえず同僚より先に歩き始めたようではある。要塞の入り口へ入る手前で横に逸れ、そのまま裏手の焼却場へ。遺灰と僅かばかりの遺留品を持ち、また何度も広場とそこを往復するのだろうけれど、本人の疲れで随分と工程は遅くなっていた) 2009/10/10 (土) 02:38 ゾンド【退室】 (2009/10/10 (土) 02:38) ◆ セレス :(これまた確かな返事に、ゆっくりと頷いて小さく笑む。本当に理解できているのかは彼の思考や道徳を信じる以外にないのだが、直接言えば分かる子供であるから大丈夫だと思う。)ああ。・・・無理はするなよ、此処はすぐに体調に出るぞ―――(敬礼をして見送って、小さな背に声をかけるけれど、これも彼には関係ないのだろうか。様々な種族の集まるこの場所で、どう気遣うのが最適なのかはなかなか分からない。・・・死者に祈る、やり方もだ。)・・・・・・戻るか。(そんなこともあって、森への語りかけは続かなかった。過去の仲間に告げる言葉は全て胸のうちに、男は踵を返して足早に、生きる人々が眠る側へ。―――予定の倍は長かった外出に傭兵と騎士がどんな反応をするかは、別の話だ。) 2009/10/10 (土) 02:51 セレス【退室】 (2009/10/10 (土) 02:51) HIGHLAND FORTRESS 峠の要塞(閉鎖しました) http://h-f.sakura.ne.jp/kariken/index.html BACTERISM MATRIX http://bacterism.matrix.jp/ PCキャラページ http://tryx-quad.sakura.ne.jp/zond.html