題名:黒と緑 登場隊員:ゾンド・ティオポロス(NPC)・ナコト(オル・ベッテ要塞) ゾンド【入室】 (2009/10/23 (金) 21:51) ◆ ゾンド :(濃密な水霧が重く垂れ込める日だった。ヤドリギの蔓が野太い巨木を覆い尽し、本来の木目も見えないほどに絞め殺されている無残な遺骸の根元に、不用意かつ無防備で無用心な姿勢を露骨に見せている人影が一つ、ある。……この少年兵が単独行動での巡回を好むことに、特に理由がない訳ではない。その最大の要因が、これだった。)………………。(張り出した板根の合間、深く苔生した緑の寝台の上で、半分閉じかかった唇と目蓋をそのままに、四肢を小さく抱え込んで横臥する人間は、呼吸の一つ、心拍の一脈、筋肉の蠕動の一欠けらすら行わず、ひたすらその場に蹲っていた。まるで巨大な重力が少年を苔の上に縛り付けているかのように、この場でもう何時間も微動だにさえしていない。) 2009/10/23 (金) 21:51 ◆ ゾンド :(今から、半刻ほど前だろうか。奥深いブッシュをわさわさ揺らしつつ、この巨木の目の前、少年とは目と鼻の先を通りすがった巨大な熊もいた。だが、彼は少年を確かにその二つの大きな黒目で捉えはしたものの、まるでそれがキノコの山か、もしくは朽ちた老木の株でも見るかのような無感情な瞳で一瞥するだけで、さっさと興味を失い濃霧の奥へと過ぎ去ってしまっている。骸にしては腐臭の一つも放たない、ただひたすら怠惰なだけの動かない肉塊は、そこだけ時間の流れが停止しているかのように、どこまでも焦点の合わせていない瞳を二つ、暗く湿った虚空に投げ出しているだけだ。) 2009/10/23 (金) 22:01 ◆ ゾンド :(動いたのは、植物ではない。古くからこの地に根を張った、空中を伝うように幹を伸ばす苔生した蔓植物であれば、ここまで露骨に動くことはないだろう。食肉種にしては芸がなく、ただ二本の直立した細長い幹を前後に、交互に突き出すなどという著しく非効率な運動を、狡猾な植物達が進化の果てに獲得するような誤謬を犯す筈がないのだから。長い二本の歩脚、短く痩せた胴体、キノコのびっしりと生えた肩甲骨の上に乗る小柄な頭部と、それだけで地に届くかのような著しく冗長な腕は、短弓を構えつつ弦を引き絞っている。板根の合間に蹲る獲物に、既に逃げ場などという甘ったるいものは存在しなかった。) 2009/10/23 (金) 22:07 ◆ ゾンド :(そのティオポロスの後衛が大股の一歩さえ踏み出せば、すぐさま少年兵に肉薄できるであろう距離に達したとき、彼は脚の歩みを固定させる。顎を緩くしゃくると、濡れた藪の合間からもう一体のエルフが姿を現した。既に山鉈を鞘から解き放ち、抜き身のまま片手に携えて足音もなく標的に忍び寄る。数秒と経たず弓士である同胞の横を通り過ぎ、呼吸の様子も見当たらない奇妙な侵入者を、白目ばかりの薄い眼光で睨むが、彼等にとってただ矮小なだけの人間種の幼体はまるで反応が無い。若芽の萌える深い額の皺が寄るけれど、なんにせよ彼らのする事はただ一つだけだ。) 2009/10/23 (金) 22:15 ティオポロス【入室】 (2009/10/23 (金) 22:16) ◆ ゾンド :(刃の厚く長い、日頃から丹念に研磨されているのだろう鋭利な山鉈の先が空中を薙ぎ、少年兵の喉笛に突き立てられる。それだけで、喉仏の性徴も僅かな白い首筋が、頚骨だけを残して半分以上断ち切られた。しかし、その物体に人間らしい生理反応は何一つ見られない。神経の反射すら全く起こらず、ただ単に柔らかい肉を切り裂いた鈍い反動が犠牲者もどきの全身を走って、それだけだ。破れた皮膚と金属片の隙間から、黒い粒子を含んだ濃厚な粘液が漏れだして、山鉈を汚す。ティオポロスの前衛は、低く鼻を鳴らした。弓を下ろした後衛が言う。)『………そレハもウ、屍骸ダな。』(人間の残骸から山鉈を抜き、そこらに自生するシダの葉で、侵入者の返り血を拭い取る。) 2009/10/23 (金) 22:17 ◆ ティオポロス :――テケリ・リ!(もう一つ、異様な人影がその空間に新たな音を生んだ。かさ、かさと草をかき分ける音すら耳をそばだてねば容易には聞き取れないほどに静かで、草地での隠密行動に極端に習熟していることはそれだけでも知れるだろう。ほとんど体を覆っていない申し訳ばかりの衣服のそこここから見える肌の上をくまなく占めた苔や雑草が、その姿をほとんど判別できないほどに世界と同化させていて、知らぬ者には声だけが突如として沸いて出たように感じられるかもしれない)リ・キルル・テリ、テファ・リ(奇異な声である。小鳥の鳴き声にも似た、原住民の間でのみ通じる符丁のような言語。奇異な隊員に殺気を向けた、先行する二人の同族が、そちらに緩慢な動作で首を向けた。それも全身に生えた植物を刺激しないように気を使った結果として、非常に奇妙な人間的でない振り向き方ではあるが) 2009/10/23 (金) 22:24 ◆ ゾンド :(山鉈を納める前に投付けられた、声量こそはごく微量であれども、森の淀んだ空気の中をよく伝う高音。前衛のエルフはやや余裕があるようで、どうやら此方の方が比較的に言って年嵩らしい。抜け目なく短弓を番えている、些か過剰な緊張感の抜けない若いティオポロスを制して、年長者がまず湿った苔だらけの口を開いた。)『イかガした、同胞、森の子ヨ………。コれは、我ラが仕留メタものでハない。』(符丁として紡がれる原始的な言語は、しかし彼等にだけは通じる口調ながら、至って落ち着き払った姿勢を想起させる。ほぼ自分らの仲間と踏んで、似た様な符丁によって声を返したが、新参の見知らぬ者が不敬を働くのならば、決して互いに容赦はないのだろう。屍骸と思われる卑小な人間ごときに、未だ動きはない。) 2009/10/23 (金) 22:35 ◆ ティオポロス :リ・キルル――リ、ケティ・ク・ラ(まるで蝦蟇か何かが妖魔と化して人の形をとったかのように、草をかき分けて地面を這いずる異形のエルフ。目前に迫った岩にべたりと手を乗せて、トカゲか何かのような挙措でその上に這い登ると、その場で行われた同族の行いを視界に収めて、魚類のようにぎょろりと剥き出された目を僅かに細める。耳と鼻で大体の状況は察していたか、驚きの色はない)リ・ロ……『シ骸、の……クビ、抉ル。我ラ、の……行イ、に、アラず』(制止の色を持って響いた先の声とは打って変わって、ぼそぼそと聞きとりにくい声で途切れがちに声を飛ばしながら岩の上で頬の苔をこそぎ落とすように岩肌へ顔を擦り付ける。武器を手にせず、異様に長い両腕をべたりと岩に張り付けたまま動かさずにいるのは年長の同族に対する無抵抗の証だ)『ヒと…は、敵。だ、ガ。死者、は……聖霊。ちがウ、か』 2009/10/23 (金) 22:47 ナコト【入室】 (2009/10/23 (金) 22:50) ◆ ナコト :(長距離砲撃戦用大型弩砲『クォ・ヴァディス』…爆裂焼夷魔導矢弾装填済―――ロングバレル展開・砲撃対象ロックオン完了。対象までの射程圏内クリアー。安全装置ロック解除。放熱フィン展開準備OK。火焔術式発動までカウントダウン開始…3…2…1…)―――…砲撃を開始しなさい。(間合いは距離にして70m。弓でも小型のものならば射程距離外であろうその地点…苔生した小高い丘の上…片膝をついた鋼鉄の巨人が轟音を発し、左肩のバリスタより槍弾を射出した。劫火を纏い紅蓮の尾を引く特殊弾頭は、エルフ族の異種が集合する中心部を的確に狙い放物線を描く。着弾すれば爆発炎上し三人纏めて空間ごと吹き飛ばす魔導弩砲…その場にいる同隊員への配慮は皆無だ。)次弾装填準備、急ぎなさい。一応、近接専用装備も解放…ですが接近させてはいけません。遠距離からの砲撃を徹底します。 『了解シマシタ。排熱開始、同時に次弾装填…』(鋼の巨人の右肩の上に立つは、防護マントを纏った小さなアルケミスト。凹凸の激しい装甲にぴたりと貼りついた電磁ブーツでバランスを保ちつつ、人形の如き無表情で敵対勢力を見据える。―――成る程、連中は天然のステルス機能を所持しているらしい。…が、ゴーレムの目に問題は無い。センサーは確実に三つの熱源体を捕捉している。) 2009/10/23 (金) 22:50 ◆ ゾンド :『ソれガ、マだ、屍骸トハ知れナかっタのでナ。見タとこロ、外傷もナイ……。』(当然ながら聖霊を信仰してもいるエルフは、しかし新手の同胞がのたまった悠長なセリフに内心でほくそ笑んでいた。現実的というか、幾度か人間との戦闘に参じ、狡賢さで勝るとも劣らない人間どもを屠り続け、生き延びてきた歴戦のエルフである。集落の長老や司祭が聖を謡うときにも似た、実質の伴わない精神主義など、あわよくば人間のテリトリーであるこの森ではナンセンスだ。ただ若輩の後衛エルフはまだしもここまで泥臭くはないようで、申し訳なさげに短弓の狙いを外の警戒に向けている。)『………………!!! 大阿呆ガ…!』(空気を切り裂く飛翔音に気付いたのは、不埒な鉄塊に呪いの言葉を吐き付ける前衛だけではない。まだしも若いながら、既に成人を向かえている若い後衛にも、無情な火の矢が此方に飛び込んでくる不快な音に聞き及び、魔の充填された矢を短弓に番え、狙う。―――先端で幽玄に輝く、青白い魔石を鏃に使った矢は、エルフにとっても特別製だ。軽くごく薄い、弦の弾ける音と共に巨大な弾丸に吸い込まれた小さな鏃は、瞬間的に強力な零下の氷壁、結界を展開する。大質量を弾き飛ばすまではいかなくとも、着弾点を逸らすくらいの役には十分に立つだろう。二人の戦士はすぐさまその場を飛び退いて、森林の奥地に身を伏せた。) 2009/10/23 (金) 23:05 ◆ ティオポロス :ルル……『こン、な、所デ……倒レ、て、いル…な、ラ――』(とどめを刺すまでも無いし、何の罠とも知れない。そう更なる抗議の言葉を向けようとした直前、新たに現れた鉄の侵略者に意識が持っていかれた。天然の偽装に身を包んでいる自分たちの存在を、ああも遠くから見つけて積極的攻撃を仕掛けてくる存在など今まで見たことも無かったのでかなり面喰ったらしく、ぎょろついた眼が零れ落ちるほどに見開かれたのは一瞬のこと。的になる岩の上から右手と右足を用いて奇怪な動作で左側面へ横っ飛びに跳ねて深い草の海に沈むと、長い草をほとんど揺らさず音すら立てない独特の動作で四つん這いになったまま鋼鉄の敵をじろりと眇めた瞳で見る。その肩に、これは生身らしい人間の姿があることも同時に察すると、腰に伸ばした手が固い木の実を掴む。狙いを目標に定めると、僅かずつ前進しながらそれを勢いよく投擲した) 2009/10/23 (金) 23:09 ◆ ナコト :……撃破しましたか? 『イエ、着弾の寸前に防護壁を展開サレマシタ。放熱時間を短縮シ、現時点より60秒以内に第二射を発射シマス。』(バリスタより白い煙を立ち上らせながらのゴーレムの返答は、敵勢力の手強さを窺い知るには充分なものだった。食肉種や昆虫種相手ならば有効な先制攻撃も、致命的なダメージを与えるには至っていない。アルケミストは燃える密林を睨みつけながらギリリと歯を食いしばる。ここからが戦争だ。戦闘ではなく、戦争。)『敵対勢力一機接近確認。マスター、お気をつけクダサイ』 …わかっています。私が死なないよう、早々に敵対勢力を殲滅してください。(見えない存在から投擲された木の実がアルケミストの眼前に迫る…が、それはゴーレムが姿勢をズラして伸ばした左手の甲によって阻まれ、甲高い金属音を密林に響かせるだけに留まった。それと同時に、左肩に搭載されている弩砲が再び唸りを上げる。) 2009/10/23 (金) 23:16 ◆ ゾンド :『残リの矢ハ?』『八本デス。』『十分ダ。外スナヨ。』(こういった超遠距離射撃を用いて来る人間には、経験がない訳ではない。要塞付近の安全な地域から次々とロングボウ、またはトレビュシェットによる巨石を質量攻撃に扱う連中とて、愚かにも戦闘を挑んだ相手はただ一人として逃さなかったのだから。敵の前衛の気配はない。よほどの巧者か、もしくは前衛となる手勢を引き連れないで来た自信家か。山鉈を腰に預け、逆にアトラトルを腿から抜いたエルフは姿勢を低く保ち、まるで四足獣の如き素早さで密林を風のように駆け抜ける。弾道飛行で射程距離を稼ぐバリスタは、しかし接近されれば途端にその脅威度を減衰させるであろう。巨弾の防御を後衛に任せ、もう一人の同胞は味方とはいえ無視だ。あれも黙って殺される訳ではあるまい。) 2009/10/23 (金) 23:27 ◆ ティオポロス :クキ……ク。ル・ファ・ライ(先に現場に来ていた二人の同胞が接近を挑むのをぎょろついた眼で視界に収めながら、こちらは草の中で這いずり回り、目当ての巨木に辿り着いた。投擲した木の実は巨人に阻まれたがそれでいい。落下した木の実はその場でぱかりと割れて、その小さな果肉に見合わない強烈な芳香を周囲に撒き散らし始める。程なくして、巨人たちが陣取る場に目掛けて戦場の危険さえ理解せずに集まってくるのは大小様々な原生の虫である。甲虫から蟻に至るまで、甘い香りに誘われたそれが鉄巨人の視界と行動を遮る嫌がらせにも似た援護になるだろうか)ヒ、リ、リ、ヒ――キュ(蔦を足場に長い手足を生かして猿もかくやという速度で巨木を登ると、そこから枝を経由して巨人たちに接近を図る。必要以上に木を揺らして自分の居場所を捉えづらくする小細工は、同時に樹上の生物を怒らせて戦場に参加させる意図も含んでのものだ。対処法は知っている) 2009/10/23 (金) 23:34 ◆ ナコト :『敵機急速接近。第二射、間に合イマセン』 ちっ…!砲撃中止!クォ・ヴァディス武装解除!爆裂焼夷矢弾を手動で投擲!迅速に!(『了解シマシタ』というゴーレムの返答を聞きながら肩装甲の上で身を屈め、ガコンと反対側の肩からバリスタが外れる音を確認する。敵の機動性、侮りがたし。バリスタで狙いが定められないならば槍投げで仕留めるまで…再びゴーレムの左腕から放られた弾頭は、紅蓮の尾を引きながらアトラトルを構えた苔エルフへと肉薄する。弾速は低下しているが、その槍弾は爆発力をまだ残している。)くっ…囲まれるわけには…! 『急速後退シマス。落下シナイヨウ、お気をつけクダサイ』(群れる虫どもの狙いは一瞬で理解できた。別方向の敵は上から来るだろうとの推測…この地点は危ないと焦りが入るアルケミストとは裏腹に、ゴーレムは冷静さを保ったまま鋼の脚部で跳躍した。一瞬遅れて大地を揺らし、虫が群れる区域を離脱…両肩部の大盾を構え、守りを堅めに転じた。) 2009/10/23 (金) 23:45 ◆ 森の影 :(白い斑点のある巨大な赤紫の花から――強烈な臭いがしている…) 2009/10/23 (金) 23:46 ◆ 森の影 :(白い斑点のある巨大な赤紫の花から――強烈な臭いがしている…) 2009/10/23 (金) 23:46 ◆ 森の影 :(振り向けば、ばかでかい女郎蜘蛛) 2009/10/23 (金) 23:46 ◆ ゾンド :(この距離までくれば、奴の息の根を止めるまであと一息。長大な弾頭を放り投げる鉄の鎧武者の鈍重な腕の動きさえはっきりと視認できれば、対処は容易だ。遠心力を用いて通常の投げ槍より数十倍の威力となるアトラトルを振りかぶり、エルフは持てる全力でそれを投擲する。初速の早い石槍は寸分の狂いもなくバリスタの弾を貫き、その瞬間巨大な火焔が暗夜の森に立ち上った。一瞬遅れて強烈な衝撃波が周囲を包み込むが、その時分にはもうエルフの長い四肢は巨木の陰に隠れ、飛び散る火の粉と飛来物から防御されている。(ラフレシア型の食肉種が発する悪臭はご愛嬌として、後退を指示するアルケミストの背後を塞ぐように出現したのは、巨大な甲殻と顎を持った女郎蜘蛛……。ぬめりつく顎を盛大に開きながら、一度触れさえすればもはや逃走は叶わない粘着質の糸を吐き付ける!) 2009/10/23 (金) 23:54 ◆ ティオポロス :ヒィィィィィル・ル・ル……!(同胞の投げ槍で爆散した弾丸がまき散らした炎が草を抱いて舐めるように緑を食らっていくのを、苦り切ったように表情を醜く歪めて見た。霧の出ている今ならさほど延焼はしないだろうが、森のただなかで無神経に火炎をまき散らす鉄の巨人に殺意はますます膨らんでいく。――その巨人が後退した先に見えた、巨大な影。見れば、樹上を駆けながら高く鳴き声のように音色が発された)シ・シ・シ!シェ・ロォォォブ!!(巨大な蜘蛛、彼ら森の民がそれら森の女狩人につけた名である。鉄巨人を始末してくれるならこれほどの心強い味方はいないが、我らにさえ牙を剥くであろう凶暴な魔獣の登場に、実戦経験の決して多くない彼が思わず絞り出すように発した警戒の音色であった。それでも巨人を追従する四肢の動きは緩めず、ほどなくして頭上にたどり着くだろう。その手に、黒光りする小柄な刃が握られた) 2009/10/24 (土) 00:00 ◆ ナコト :なッ、あ…! 『! 敵対勢力一機増!』(これは完全に相手の策謀に嵌ってしまった形と言えるだろう。守りを固める所にバックアタックを受ければ、咄嗟にハルバートを振るって女郎蜘蛛の首を斬り飛ばすも粘着質の糸にゴーレムの機体が囚われる。アルケミストに被弾はしなかったが…機動力は完全に殺された形だ。)『行動不能。敵対勢力二機接近…』 …〜〜〜〜ッ!(もはや声すら出なかった。恐怖ではなく…悔しさ、なのだろうか。今まで圧倒的な戦力差で森を制圧してきたこのゴーレムが、ただの超合金製の玩具に等しい扱いを受けている。研究者として、自信作であるゴーレムへのこの扱い…自尊心をズタズタにするには充分であった。―――…樹の上のの熱源反応は捕捉している。そして木の陰に隠れているのもお見通しだ。が、その場から行動できない。この密林では異音である駆動音を響かせながら、もがくのみ。) 2009/10/24 (土) 00:06 ◆ ゾンド :(脇の鎧武者は、あれの護衛であろうか。何にせよ。最早戦闘機動の叶わない案山子と化した物の方は平然と無視された。小高い丘は周囲に木陰がなく、広々とした空間が広がっている。火の粉舞うその中央に陣取ったティオポロスは悠々とアトラトルに手槍を装填し)『終わリダ。オ前の神ニ祈りナ。』(殺せる者から先に殺す。このエルフが操るのは、徹底して敵の頭数から減らしにかかる戦術だ。その相手が矮小な小娘であろうと、思わぬ反撃を食らいかねないリスクの高い白兵戦を厭い、あくまで投擲で決着を就けるつもりのエルフは、また同時に大蜘蛛から距離を取る。――1mほどの長さの手槍が、ティオポロスの携えるアトラトルから放たれると、それは吸い込まれるように少女の細い首筋へと飛んで―――) 2009/10/24 (土) 00:21 ◆ ティオポロス :ルゥゥゥゥ……!!(同胞が致死の一撃を、巨人に指揮を行っているように見える小柄な人影に向けるのが見えた。ぎらり、と見開かれた目に光がよぎり、同胞がそれを投げるよりも早く体が動いたのは、若さゆえの逸りによるものだ。獲物が死を待つ状態にあるならば、他の誰よりも早くその頸に刃を突きたて、戦利とする。そんな、若さから来る功名心が彼にも存在して、だからその体はすでに死が約束されているとも思える小さな人間へ、膝で枝を挟んだ状態から蝙蝠のように逆さになって身を落として迫る)ケ・リァル――フ、ラ!!(俺のものだ、と言う主張を意味する符丁の鳴き声である。アトラトルの刃が届く前に自分がこの首を狩ってしまえばよい。当然、仲間の刃に当たらぬように気を使った位置からの攻撃ではあったが) 2009/10/24 (土) 00:28 ◆ ナコト :(観念したかのように、一度目を閉じる。そして、怒りに震える無感情になりきれていない声で命令を飛ばした。)……バルディッシュ、外部装甲剥離。 『了解…キャスト・オフ 《Cast off!》』 (祈る神などいない。なぜならば、全知全能の神は自らの手で生み出すものだからだ。その本質が機械仕掛けであれど…―――) 『防御、同時に対空迎撃…開始シマス』 (アルケミストの首筋に撃ち込まれる筈の手槍は直撃寸前で鋼の腕に掴まれ、動きを停止する。同時進行で逆側の鋼の腕が地に転がっているハルバートを拾い上げ、降下してくる苔エルフへと巨大な刃を突き出した。完全に重力に身を任せているならば、間違いなく串刺しとなって血の雨を降らせる軌道だ。―――おそらく、これを視認できた相手は昆虫種の脱皮を彷彿とするだろう。粘着質の糸に捕縛された鉄巨人の中からもう一機…例えるならば、ヒモトの忍者に似たスマートなシルエットの鉄人がその場に立つ。装甲の各部から蒸気を噴出しながら…紅い双眸を闇夜に浮かばせて。) 2009/10/24 (土) 00:36 ◆ ゾンド :『邪魔立テスるなァ!!大阿呆ガァ!!』(明らかに怒気を孕んだ高音の絶叫は、しかし冷淡な色の浮かぶ感情の見えない表情から出されている。惜しくも届くことなく、脱皮し成虫へと、精逞に変貌した黒い細身のシルエットに阻まれた。仕留め損なったのは事実だが、これで敵も奥の手を出し切った筈だ。エルフはアトラトルを納めると、腰の山鉈に手を伸ばす。己の邪魔をした馬鹿者は極めて危険な状況だが、あの細身の男にもはやどうされようと、知った事ではなかった。)(そしてまた一本、短い矢がナコトを狙い高速で飛来する。巨弾への迎撃を任務とされていた後衛のティオポロスもこの場へ馳せ参じたようで、牽制の一打を放った途端に広場へその異形を露出させる。武者震いに五体を振動させるティオポロスの若者が、曇る夜空に甲高い鴇の声を放った。) 2009/10/24 (土) 00:44 ◆ ティオポロス :キゥゥァラハァァァ!!(歓喜の色を帯びた鳴き声と共に苔を纏った右腕が付き出した刃は、しかしそれに数倍する巨大な刃の飛来によって阻まれた。圧倒的な重量の差に軽い金属の接触音を残して弾かれた黒い刃を目で追う間もなく、眼前に迫ったそれを避ける間も、やはりない。僅かに身をよじって致命の一撃は避けんとするが、それでも刃はごく当然のごとくに苔むした右胸に鈍い音を立てて突き立つ。めきりと音を立てて肋骨が砕け、肺を抉って貫通した刃が背中に生えていた細い若木をも薙ぎ倒して抜ける)ゲラ……ァ、ハ……!?(まさかあの状態から、こうも苛烈な反撃が飛んでくるなどとは微塵も考えていなかったがゆえのあまりに呆気ない致死の直撃に、最初は何が起こったのか解らないという顔できょろりと己の右胸を見た。その眼がすぐに死を悟って見開かれ、唇から何事かを呟こうとして、代わりに赤黒い血塊が零れる。――それでも、最後に己を貫いた巨大な刃に体ごと覆いかぶさり、その長い腕を精一杯に伸ばして姿を細く変えた目前の鉄塊を抱き締めるように動いた)――ゲ・ロフ…ォ、ムウ……!(僅かでも行動を制限し、得物のバルディッシュを封じようとする動作。もはや殆ど残っていない命を掻き集めたように、満身の力を込めて鉄人の腕をはっしと掴み、その動作を制限しようとしていた) 2009/10/24 (土) 00:56 ◆ ナコト :(頭上で串刺しの肉塊と化す存在に、光の宿らない瞳を向けた。バタバタと血の雨が降り、防護マントの灰色キャンバスを朱がいくつもの縦線で彩る。―――…一人、殺した…が、このような偶然の産物に近い不意討ちが成功した所で一体何の意味があるというのか…アルケミストが手を振れば、ハルバートを握ったままのゴーレムの腕が動いて肉塊を短矢の盾とする。まだ息があれば、それが最期の一撃となるだろう。後、動かなくなった肉塊を踏みつけながら斧槍を引き抜き…)………。…撤退します…これ以上の戦果は望めません…。…ヤクタアレアエスト…。 『現時点で最良の判断デス。浮遊式魔導機雷、拡散設置。』 (命令を飛ばす。その瞬間、ゴーレムの胸部装甲が展開し無数の球体を辺りに射出した。ゆっくりとした速度で浮遊する球体は、触れれば強い光と音を伴って炸裂する機雷だ。それをあたりに拡散することによって、退路を作る。)………覚えておきなさい、ティオポロス。…今回の落とし前はいずれ、鉄火による死と恐怖をもって償っていただきます…。―――後悔するといい、我々を敵に回したことを…。(アルケミストが最後にそんな捨て台詞を残し、黒い機体は脱皮前からは想像もつかない機動力で戦域を離脱した。残された機雷は触れられなければ一定時間後にそれぞれ自然爆発し、辺りを火の海と変えて再び森は静寂を取り戻すだろう。) 2009/10/24 (土) 01:11 ナコト【退室】 (2009/10/24 (土) 01:11) ◆ ゾンド :(謎の球体を辺りに散布した細身の男は、主人であろう小柄な人間を連れたまま、電光石火で逃げ去っていった。二人のティオポロスだろうと、こうまで引き離されればもう追うことは叶わない。バラ撒かれた爆薬は、後衛のティオポロスの射掛けた矢に、単純に淡々とまさに処理といった趣で射貫かれて、一個が爆発すれば次々とそれらは誘爆する。瞬く間に辺りの森林は火の色に染め上げられていった。もはや冷たい死体となった同胞を一瞥し、彼の戦死した証となる装飾品を数個、もぎり取り)『…アレハ、何ヲ言っテイた……?』『俺ニはワカらなイナ。』(無残に焼け落ちてゆく、故郷の、そして神聖な森を背に、二人の戦士は帰途に着く。手負いの獲物を逃がした事は些細な事だ。後輩の経験を積ませられたことだけでも、収穫としたい。――彼らが遺骸として見付けていた少年の姿は、既にかつての場所からは跡形も無くなっている――) 2009/10/24 (土) 01:21 ゾンド【退室】 (2009/10/24 (土) 01:21) ◆ ティオポロス :――・。(そして、最後に彼だけが残った。肉を裂かれ、骨を砕かれ貫かれ、命の欠片すら今にもその手から零れて散ってしまいそうな、毛虫ほどの力さえ残らない瀕死の肉だけが、地に這いつくばっていた。それが滾々と湧き出る泉のように血潮を吐き出しながら、ごろり、と極めて緩やかな動作で仰向けに草の上へと寝転がる。炎の色に染まって熱い舌に舐めとられていく緑をほとんど闇に染まった目で見て、閉じかけた瞳がぎょろり、と見開かれて天を仰ぐ)ル――ル……エ、ァ……ッハ、(何かを、言おうとしている。苔と蔦に覆われた左手に炎が舌を伸ばして燃え立ち始めたが、その熱さも感じない。ただ、冷たくなっていく自分の体だけが理解できた。――これだけは、言わなければ)……ルエ・ルエ・キ、リア――ラエ・ロ・ティタ!ラエ・ロ・ティタ!ラエ――ロ、(我が命を、還す。育み、生かし、また殺しもする森への敬意と、礼を籠めた最後の言葉。己の肉体と魂を森へと差し出し、糧となることを誓う最後の言葉。それだけを残して、若い男の体は炎に包まれた) 2009/10/24 (土) 01:28 ティオポロス【退室】 (2009/10/24 (土) 01:29) HIGHLAND FORTRESS 峠の要塞(閉鎖しました) http://h-f.sakura.ne.jp/kariken/index.html BACTERISM MATRIX http://bacterism.matrix.jp/ PCキャラページ http://tryx-quad.sakura.ne.jp/zond.html