題名:とある場所の物語 登場隊員:ゾンド・エル(エンデュミリオン要塞) ゾンド【入室】 (2010/03/06 (土) 22:45) ◆ ゾンド :(この、まるで身の危険を感じない平穏な要塞で漫然とした日常を過ごすのも、随分と長くなった。任地である遠くの熱帯雨林の様相が、今になってはまるで作り話のような、書架のどこかで見聞きした空想の一幕であったかのように感じられる。こんな事を現実に口にしては、実際的に戦い抜いている同僚の多くに申し訳が立たない事も、漠然とながら理解はしているが、感覚というか、空気の肌触りが、記憶と実感を乖離させているのだ。)…………。(自室の調度品と言えば本当に寝台くらいしかないので、筆記作業を行うにはここ、パーティルームを一時的ながらにせよ占拠するほかにない。だいぶ荒っぽく使い込まれた筆記具を、慎重にと言えば聞こえがいい、蝸牛の歩みのような鈍足で走らせている。珍しく、羊皮紙は高級品だった。遠景にした暖炉から漏れる仄かに白い光が、空気に濁って紙面を黄色く照らしている。) 2010/03/06 (土) 22:52 エル【入室】 (2010/03/06 (土) 23:16) ◆ エル :(隣の執務室から抜け出してパーティルームにやって来たのは、ラフな私服姿の隊長代行だった。些細なインクの汚れをつけた手にカップを持って、かちりと扉を閉めてから、書き物の音だけが静々続いている、扉の向こうとあまり変わらない状況の室内へと向き直る。話し声が聞こえていなかったから、殆ど人がいないのは案の定というところ。)・・・お疲れ様ですー。(ゾンドの方を見、にこりとして会釈した。少し歩き――いつからかソファに置き去りにされていた薄い上着は、この青年の物だったらしい。今日の気温では少々肌寒く感じる軽装の上に羽織って、持ち手を指に引っ掛けたカップを少年へと示す。)お湯沸かしますけど、いりますか? 2010/03/06 (土) 23:21 ◆ ゾンド :(前触れなく扉が開いたのには、正直に言って意表を突かれた。ペンを操作する手を停めて、インクで汚さないように羊皮紙の外へと席を外させる。遅い動作で首だけをエルへと向けて、顎を傾ぐ程度の会釈と)あなたも、おつかれさま。(微小なカップの汚れに目敏く気付いたが、きっとそういったデザインなのだろうと独断の解釈をして、そのまま移動する代行を目で追った。彼の行く先はじきに分かったが、先程の自分が来る前から在った上着は、なるほどエルの所有だったらしい。下手に弄らないでいたことが正解だった様子に、心中で軽く安堵する。)ん……。でも、なんだか最近は、あなたも含めて、皆に淹れて貰ってばかりで……。少しだけ、申し訳なく感じてしまっている。(それは結局のところ、回答をはぐらかしているだけなのだが、自分からは何の代案も思い浮かばないのだった。)お茶っ葉って、そのまま食べるわけには行かないものなの?(行き場に窮した思考は、あまり穏当とは見做しがたい言動を返す。) 2010/03/06 (土) 23:33 ◆ エル :はい。(同じく返された労いになんとなく相槌打って・・・続けられたのは曖昧な言い方ではあったが、必要との返事だと解釈した。それにも頷いて湯を沸かすべく奥へ。)え?・・んー、そのまま食べると美味しくないんじゃないですかねー。食べると言うより口に引っ付いてしまいそうで・・・飲み物ですからねぇ。水分がないと。(不便を省こうというのだろう、ゾンドの質問に視線を上へと向け・・暫し考えてみるが、子供の頃に誰かがやって、ぺっと吐き出していた覚えしかない。どうにか食べる考えに行く前に、本来の用途で利用すべきではとあっさり述べてしまい)あっ、でもお菓子には入れたりしますよね。クッキーとか。(思い出して後付する。水の用意と点火に少し手間取って、話題の茶葉を探すのはそれからだった。) 2010/03/06 (土) 23:41 ◆ ゾンド :ん………む、……なるほど。喉にや上顎に張り付いて、とっても痒いといった体験談は、聞いた覚えがある。…えっと、クッキー……(その道に詳しい人物の仰る話では、どうやら、非常に不便らしいというようだ。クッキーという単語を聞いて、どこかゾンドの様相が上の空になったが、それが一般的な菓子の名に行き付くのに数秒の時間を要しただけのことで、まだ文明社会に慣れない地方出身者の風体を無意識に真似ていた。東区には、無縁の物資だったからである。それから、予想だにしない有難いことに、代行手ずからお茶を淹れてくれる事に相成った様子を見て)………少し、大事なこと……だと思うけど、……聞いていい?(言葉とは裏腹に、視線も手指の集中も、卓上の書き物に向かっている。) 2010/03/06 (土) 23:55 ◆ エル :ええ。あと・・・ケーキとか、パンとか。粉に混ぜて焼くんですよ。・・・・そういえばあれはあんまり引っ付かないな。(相手の思考の間を気にする事はなく、こちらはこちらで独り言のように口にしながら、紅茶の用意に意識を向けていた。前に底をついた気に入りの茶葉は誰かが補充してくれたらしい。ゾンドに好みを聞くのも忘れて、それを二人分ポットに投じた。まあ、極端に好みが分かれるような匂いの付いた物などではないので大丈夫だろうが。)―――はい?なんですか、(そういえばゾンドもペンを手にしているようだったが、何をしているのだろう。手伝いをしてくれているとは聞いた覚えがないけれど・・と問いを口にしようとしたところで、逆に向こうから声がかかった。火を止め、湯を注ぎいれながら返す。) 2010/03/07 (日) 00:02 ◆ ゾンド :………大切なひとに、手紙を書いている。(エルが口を開きかけたのを察知したから、『大事な話』の前に敢えて別の話題をはぐらかしに回した。勘の鋭さには全く持って自信がないものだが、的を射ていなくとも構わない。実際に少年が書いている行列と言えば、ミミズがのたうち回っている様子よりかは割かし文字めいている程度の練度であるし、第一普通には見慣れない単語が多く踊っているものだから、ほんとうに他愛もない部類の、兵隊の精神的慰安に使う類の文書に見えるだろう。)………あなたは、まだ、独身……だったよね。(こでれも、なるべく角の立ち難い言葉を選んだつもりだ。話題の方向性さえ悟ってくれれば、それで十分な類の。まさか本格的に生物的な表現をする訳にもいくまいし。) 2010/03/07 (日) 00:13 ◆ エル :あ・・・・(そうですか、と彼の方は見ないままに微笑み――かけたのだが、後に来た言葉に頬が半端な位置で止まった。手紙の話は、自分が訊こうとしたことを察せられただけのか、それとも独身云々という話題の為に出されたのか、判断できないまま。)ええと、はい。そうですけれど・・・(もし関連があるのだとしたら恋愛相談に行きそうな運びだが、相手はそういう事柄と関係を見出しづらい少年兵である。さっきまでとは違い、向き直って、書面を認めるゾンドを見ながらはっきりと頷いた。紅茶の出具合を気にするふりをして、時折視線を余所に向けつつ。) 2010/03/07 (日) 00:21 ◆ ゾンド :(事実、手紙の書面と話題の意図は、どこまで行っても交わらない無限の平行線なのだが、そういった連携というか、連想に関しては無頓着なので)適齢期っていう統計が、あるみたいだから。才能のあるひとなら、もっと早いとも聞いたし。(平行作業でも書き損じが無いのは、単に筆運びの慎重さの報酬である。薬缶から昇る湯気がパーティルームに多くの水分を齎したが、それがインクに反映するにはまだ時間がかかりそうなものだ。)この部隊の中からの、脱隊者が頻繁で、多いのは、やっぱりそういった、ドメスティックな要素からだと思う?(ここまで来てやっと本来の意図の表現に達したのだから、迂遠な回り道も大概だった。) 2010/03/07 (日) 00:34 ◆ エル :そう、ですねぇ・・バラつきはありますけど人間だと二十代には・・・・・場所によってはもっと早いですねー・・・(つまり自分は、育った場所の平均で言うと完全に遅れているわけだが、それはいい。今は関係ない。どうやら手紙の内容とは関係なさそうだ、とここで知れて、恋愛相談に応じられそうにない男はほうと息を吐いた。)えっ。た・・・多分違うと思います・・・(が、質問の主旨がこれまた、なかなかに衝撃的で目が丸くなる。自部隊の前隊長はそれに近い理由だったが、その他の人々の理由がそうとは聞いていない。)聞いてるのは、異動とか、実家に戻られたとか、そういうのが多いですよ・・・・だから多分。(少々慌てながら――いつもそうなのだが、少々濃く出すぎた茶を、まずは未使用のカップに注いでゾンドに差し出した。・・・子供の姿相手に、砂糖についての質問もしない程度には焦っているようだ。) 2010/03/07 (日) 00:43 ◆ ゾンド :そう………、違った。(筆を止めて、丸々とした虹彩の大きなエルの瞳に見入った。呼気に紛れそうなほどに細い声で納得の意を示し頷いて。上層部というか、文官やら管理職やらといった、隊の運営に関する人々からはだいぶ距離があるので、そういった個々の事情に踏み入った話は、殆どと言っていいほど疎い。それはそれで、いいのだが。)そんな事はなかった、か。(照明の少ない夜半は、殊更にカップの中身を濃く見せる。慎重に手を添えて持ち上げようとしたけれど、砂糖の問題……と言うより、カップそれ自体が随分ともう熱いので、このままでは到底飲めそうもないと悟ると、すぐに諦めて置き戻してしまう。空冷するまでは、ちょっとの間、我慢だ。)あなたは………、今まで親しかったひとと、もう長くは会えなくなったときに、おなか痛くなったりとかは、ない?……我々は、少しだけだけれど、身体の調子が悪くなる。 2010/03/07 (日) 00:55 ◆ エル :・・・・ええ。(自分の分を、外はインク、内は茶渋で汚れたカップに注ぎながら頷く。この頃にはもう動揺も落ち着いていて、ゾンドの表情やらを読み取る余裕もいくらかあった。ただ、元から微妙な、小さな変化を読み取ることは巧みではないのだけど。ポットの中身の処理をしないまま、少年の隣の椅子を引き、腰を下ろして熱い陶器を手の中に納める。)・・・お腹は、痛くなりませんね。僕の場合。ただ・・・頭がぼーっとしたりして物をよく考えられなくなったり、体を動かすのが億劫になったりは、します。(どうしてそんなことを?と問う前に、やはり少年の方が早く、問いを重ねた。その言葉が示しているのがどういうことなのかは、表情を読むのが不得手な自分でも、相手がこの前まで別の任地にいたこともあって大体は察せているとは思う。ただ断定はせず――熱く濃い紅茶に、ふっと吐息を吹きかけてちょっと笑った。)逆に、頑張らなきゃって思って動く時もありますけどね。 2010/03/07 (日) 01:04 ◆ ゾンド :(横の椅子に座ったひととは、文書を隠そうとなどする訳もなく、ペンを休めて彼を見遣る。身長に比例する座高の分だけ、彼の目元を見上げる形になった。)すごいひと。我々は、別の仕事に入り込むことで、思考からやっと外せているくらいなのに。(やっと冷め始めてくれた紅茶のカップを、ほんとうに縁に唇が触れるだけの仕草で、大したことのない水量を含む。まだまだ、熱いくらいだ。味の方は……独特の濃厚な風味がしたが、元からこういった物なのだと理解する。)………あなたが来てくれて、よかった。誰もいない部屋は、頭か、下腹部の奥がむずむずするから。 2010/03/07 (日) 01:21 ◆ エル :っふふ。誰かがいない分、頑張っておかなきゃなーって、思うんですよ。(首を傾げるようにして、少し下の位置のゾンドの方を見る。自分とは色も雰囲気もまるで違う黒い瞳と目が合って、小さく笑った。)・・・そうしたら、その人が戻ってきたとき、少しは楽させられるでしょう?・・・・・・他の人も、誰かがいなくて大変かもしれませんしね、自分がやらないと、って言い聞かせてます。会えないのはそりゃ、とても寂しいんですけどね。お役に立てて光栄です。(言い、猫舌でない人は軽く冷ましただけで紅茶を一口含んで――いつもより強く出ていた渋みに、しまった、と少しの間黙り込んだ。人に出す物ではないなと思って)・・・・あの、美味しくなかったら飲まなくていいですよ。ちょっと時間を置きすぎました。やっぱりなかなか、上手にできませんねー・・(我慢してしまいそうな人に言っておく。) 2010/03/07 (日) 01:33 ◆ ゾンド :……………。(かれに対して、些か不穏な衝動に支配されかかったところを、思考と神経にはいつでも不服従な身体が、逆に互いの身分を守ってくれたようだった。改めてカップを取り、味が分かりそうな程度には飲用するが)??……これは、こういう味ではないの?(美味しくない、だとか、上手くできなかったとか、そういった物はさっぱり謙遜だと受け取って、久しぶりの紅茶の味に何の疑念も持ち合わせていなかった。)お茶、ごちそうさま。我々はもう、自室に戻るから………。あなたも、書類は残ってたり、するの?(心配の言葉を吐いたものの、手伝えるだけの学も地位もない少年は、無責任に立ち去ると言う。それは全く正直であって、椅子を立つと荷物を纏めて、撤収の準備にかかった。朝礼も有名無実で、訓練すら存在しない要塞の暮らしは、むしろ意識的に規則を履行しなければ、あっと言うまに怠惰の淵へ堕落してしまうだろうから。)じゃあ、おやすみなさい。(扉の前で軽く会釈をしてから、真っ暗な寝台へと向かい足はよどみなく動く。) 2010/03/07 (日) 01:45 ゾンド【退室】 (2010/03/07 (日) 01:45) ◆ エル :・・・ちょっと失敗作です。(疑問符を浮かべた顔は、無理して言っているようには見えなかったが――騙すようなのも気が引けて、一応は正直に白状して、苦笑いする。自分だって昔は気にせず飲めていた範囲な気がするが、舌の肥えた今ではなんだか残念な気分になる代物だ。)お仕事はあと少しですよ。大丈夫、すぐ終わります。(仕事に関しては、握り拳を作って無意味にも意気込みを見せ、答える。実際、少々寒さにやられて出てきただけなので今からやっても問題はない量だ。小一時間かからないだろう。)はい。・・・・・おやすみなさい。良い夢を!(就寝の挨拶にしては元気のよすぎる口調で告げて、ゾンドを見送ってから伸びを一つ。立ち上がり、まだ半分中身が残っているカップを手に執務室へと引っ込んでいく。その後仕事は滞りなく終えたが、自室に戻る際に此処を通ってようやく、出涸らしの始末をしていないことに気付く抜けっぷりは相変わらずなのだった。) 2010/03/07 (日) 01:57 エル【退室】 (2010/03/07 (日) 01:58) HIGHLAND FORTRESS 峠の要塞(閉鎖しました) http://h-f.sakura.ne.jp/kariken/index.html BACTERISM MATRIX http://bacterism.matrix.jp/ PCキャラページ http://tryx-quad.sakura.ne.jp/zond.html